月刊OLN 2021年2月号

先日、寝る前に小5の長男が話しかけてきました。
「お父さん、むずかしい本とか読んでないで、もっと基礎を固めなきゃダメだよ。」
「土台となる部分を鍛えれば結果はあとからついてくるんだから。」
「…って、それっぽいこと言ってみた!」

ジョークでいっているとは理解しつつ、
「分かったようなことを言いやがって」と思いつつ、
なんか見透かされているような。
まあ、一理あるしな、とも。

ちょうどぼくも個人的に中田裕二さんの「back to myself」を聴いて以来
ことあるごとに「意識を自分自身に集中」するように心がけてます。

自分たちなりに成長してきたなって思える今だからこそ原点に立ち返ろう。
こんな風に考えている最近です。

オルンにとっての原点はいくつかある気がします。
それらを分類すると、目に見えるものと見えないものの二種類に分かれます。
目に見えるものはデザインとかのビジュアル面での意味で、目に見えないものは仕事のしかたや、人間関係や、生き方そのものだったりします。

2014年の秋にOLNの活動が始まりました。
でもそれよりずっと前に目に見えない部分の哲学はすでに固まっていました。

前置きが長くなりましたが今回の月刊OLNはこのことについてお伝えしたいと思います。

OLNにとってのサスティナビリティ

「サスティナビリティ(持続可能な)」っていう言葉は今では誰でも当たり前に使いますよね。
(ほんとに誰でも、ではないですけど。)
おもに自然環境にあたえる影響とか賃金の安い国の労働環境について語るときに使われる言葉なんだろうと認識しています。

ぼくたちは業界紙でその言葉が出てくるよりも前から、(もちろんOLNを始める前から)リアリティのある疑問とともに自分たちなりに向き合ってきた気がします。
地球全体の話というよりも、もっと身近な問題として。

きっかけは桐生に沢山いる繊維の各工程の職人さん、経営者さんからいっぱい聞かせてもらった経験談や、
裏話のような愚痴だったりします。
そういうリアルな話を通して、いろんな疑問や課題が見えてきました。
最初はウチの井清織物をどうやったら再建できるのだろう?ということだけを考えていましたが、だんだんと
「業界全体の構造的な問題に向き合わなければ解決できない」
ってことが分かってきました。

簡単にいうと
「強い立場の側にとって都合の悪いこと(納期やらコストやらいろいろ)は、
すべて立場の弱い側へとしわ寄せが行く」ってことです。

ここでの問題は、長い間のしわ寄せの結果いろんな技術が滅んでいってるって点で、それはぼくたちにとって死活問題でもあります。

(産地に対して強い立場になることが多い)問屋さんやさらに立場の強い(ことが多い)小売店さんが見て見ぬふりをした都合の悪いことは、逆らうことのできない産地側へと押し付けられ、ぼくら機屋も同じように各工程の職人さんに押し付けてきました。
文句の言えない方へ、より立場の弱い方へとしわが寄ります。

諸先輩から聞かせてもらった本音の愚痴話は、もしぼくが大きな会社の人間で立場が圧倒的だったら聞かせてもらえなかった話なんだろうと思います。
あるいは、ウチの父が相手の顔色や足元を見て取引をするタイプの切れ者だったら聞かせてもらえなかったんだとも思います。
(父は商売に関しては下手だけど、悪い人間ではなかったのでぼくも手伝いたいと思って帰って来た訳で。)

ぼくと妻(しのさん)はそのころよく言っていました。
「こんな(仕事のしかた、させられかた)の続きっこない!」って。

人の心配をする前に、そもそもぼくたちも厳しい状況だったんですけどね。笑

中高生でも大学生でも社会人でも、理不尽なだけの謎のルールや先輩にされてすごく嫌だったことってありますよね。
(後々になってその意味が分かり、「あの時厳しくしてくれてありがとうございました!」みたいな類(たぐい)ではなくて。)
で、そういうのに耐えて上の立場になった時、同じことを下の世代にする人っています。
「これが伝統だ」と。
ところが、同じ境遇を経験していても「されて嫌だったことは俺たちの代で終わりにしようぜ」ってなる人もいます。

まあ、ぼくは後者でありたいとは思っていまして。

そんなわけで、ずっと目指してきたのは「作る人」「伝える人」「使う人」がそれぞれ対等で、お互いに敬意を払えて、一緒に豊かになれる関係です。

それで具体的にぼくたちが何をしたのかっていいますと、大きくこの2点。
・職人さんの工賃を値切らない。
・無理な納期を押し付けない。

すごく普通のことです。笑

地味だけど仕事を請ける側にとってはすごく重要です。ぼくたちは発注もしますが、もちろんOEMなどで仕事を請ける側でもあるので、どちらの立場の気持ちも分かります。ウチは小さい工場だから頑張ったところでその効果は小さいです。でもズルをして成長した企業はもうその手口を止めることがすごく困難だというのは知っているので、効果は小さくても今から始めることが大事だと思ってます。

一方で商品を大切にするためにお取引先の方々にお願いしていることもいろいろあります。
目的は商品と産地と消費者、そしてお取引先様自身を守るためです。
どうしてそんなお願いをしているのか理解できない方にはご遠慮いただいています。

最初の頃は本当にビビりながらでしたが、案外、理解して共感してくれる方というのはいらっしゃるもので、今は自信を持って伝えています。

ところで。

どういう状況になれば「サスティナブル=持続可能」と言えるのか考えてみました。
大きな視点では環境破壊につながる行為を減らすことと、経済とのバランスが取れている状況なんでしょう。
ぼくたちの織物の仕事でいうと各工程の仕事、そのやり方で持続できるかどうか、そんな気がします。

ぼくたちの織物の仕事は本当にいろんな人たちの技術の集積があってはじめて成立します。
「ものづくりしたい」っていう意思がどんなに強くても協力者がいないとどうにもなりません。
だから関わる人たちみんなが少しずつ幸せになる仕事の仕方じゃなきゃ、続きっこないんです。

そろそろまとめてみますね。笑
OLNにとってのサスティナビリティ。
それは、弱いところにだけしわ寄せが行ってしまわないようにみんなで工夫し続けること。

どうして「OLN」は活動名なのかというと、その理由のひとつとしてこういう目的を達成するためだったりします。

工場とかCM

うちの古い工場を見学した人に「素敵ですね」と言ってもらえることが増えました。正直、自分たちでもいい織物工場だなって思ってます。
「会社の借金を織物業で返す」って相談したときに「それは無理!」って反対したしのさんですら、でもこの工場を残したいねって言ってたくらいですから。

たぶん今よりもこの先になってからの方が、よりこの工場の価値があがると思います。
そしてこういう時代遅れでイカしている織物工場が町のあちこちにあることが、桐生の文化的な価値を高めてくれるはずです。
今でもすでにそうなってますけど、将来はもっと。

で、お正月の箱根駅伝を観ていたらいろんな方から「観たよ!」って連絡が来ました。TVCMで井清織物の工場が出たんです。リリーフランキーさんが出てるハウスメーカーのもので、すごく綺麗な映像でした。
一緒に登場していた後藤織物さん、帽子屋のコンポジションさん、群大生のカフェ、桐生みんなイケてました。

そういえば撮影の時。
工場の外に関係者が画像を確認するためのモニターが設置してあって、しのさんはそれを観ていたそうです。
映画のように美しく撮影されたぼくたちの工場がそこに映し出されていて、しのさんは涙が出たそうです。

「諦めなくってよかったね」って。撮影スタッフの方が帰った後、しのさんにそう言われて、今度はぼくが泣きそうになりました。笑

別にCMに使われたからどうこうなる訳じゃないですけど、でもやっぱり周りからポジティブなイメージでとらえてもらえるのはすごく嬉しいことです。

1月の振り返りと2月の告知

1月の振り返りです。
東京でのユカタショーケース、ありがとうございました。
厳しい状況ながら新作の半巾帯を中心にいくつかの商談ができました。
嬉しい出会いもありました!

2月の予定です。
ただいま京都でのユカタショーケース開催中です。
こういう時期なので、こちらからあまり「来てください!」とは言えません。
でもおかげさまで初日はとても充実していました。2日目のOLNブースは静かでしたけど。今から3日目が始まるところ。がんばります。

おわりに

昨年末、曾我部恵一さんのライブを桐生で観ました。
受付のタイミングが偶然一緒だったのが、ご近所で人気の古民家レストラン「ごずこん」のご主人、のんちゃん。
そしてぼくの敬愛するアーティスト、king of opasの冨沢仲さん。
みんな同世代です。
3人並んで美味しいビールを呑みながら贅沢な時間を堪能しました。
その余韻は今でもぼくの日常を彩(いろど)ってくれています。

音楽とかファッションとか美味しいものとか常にそういうものに囲まれたいですけど、暮らしの中のほんの一部にあるだけでも心は十分に満たされます。

でも人生山あり谷ありです。
余裕がなさ過ぎて、それどころじゃない時期だって正直ありました。

そういう時に支えてくれたのは「こういうものを作りたい」っていうイメージだったり、「きれいごとを成立させてやる」っていう意地だったり、ぼくたちを応援してくれる方々からかけてもらえる言葉の温かさだったりします(そういうありがたい言葉に本当に救われてきました)。

「つづく」「つづける」って本当に困難なことで、でもすごく価値のあることです。

ただいま2021年2月。
まだもうしばらく、コロナ渦という今の厳しい状況は長引きそうです。

みんなで励まし合いながら乗り切りたいな、って思ってます。

今月も長文になっちゃいましたが、最後までお付き合いいただきましてありがとうございます。
そんな気長で心優しい皆さんにとって、この2月が素晴らしいひと月となりますよう願っています!

ではまた。

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