月刊OLN 2020年12月号

みなさんこんにちは。
いかがお過ごしですか?

いよいよ12月ですね。
べつに1年が終わるからって何かが変わるわけではないけれど、やっぱり区切り、節目って大切だなって思います。

「終わり」をきちんと迎えたほうが「はじまり」が気持ちよく明ける、そんな気がします。
寒くて泣きたくるような厳しい時もある冬の朝ですが、空気の澄んだ感じの度合いでいったらベストじゃないかなって思います。
張り詰めた緊張感と清々しさが好きです。

春はあけぼの(夜明け)
夏はつとめて(夜)
秋は夕暮れ
冬はつとめて(早朝)。

ほら。清少納言さんも言ってます。
その気持ち、分かるわー!

ところで最近我が家の長男がこの月刊OLNの存在に気付いたようです。
でも文章が長すぎて途中で飽きたみたいです。(笑)

さっき、ぼくもこの一年どんな感じだったかな、と2020年1月号から一気に斜め読みしてみました。
たしかにどれも長くてびっくりしたんですけど、ぼくが言いたいのはそういうことではなくて。
「今現在のぼくたちには当たり前になっているアノことはここから始まってたんだ!」みたいなことを発見したり、
「え、これも今年の出来事!?」と自分の記憶ではずっと昔の出来事だと思っていたら案外最近のことだと分かったりして。
なかなか興味深かったです。

そういうわけでいつもの報告やら告知やらは手短かに済ませて今年一年を振り返ってみたいと思います。

どこかを省略しないと長引いてしまうので。

11月8日(土)富岡おかって市場

「つきいちマルシェ」というイベントに参加してきました。
メインとなっている出展は素材にこだわったパンやケーキやカレーやあれやこれなのですが、
驚くのは料理の素材そのものの出展者だけではなく、バラエティ豊富な…。

いつもの調子で書き始めるとやっぱり長引きそうなので要点のみ。
・食べ物、当たり前だけどホント重要。
・安全で健全な食材を選べるってすごく贅沢なこと。
・織物は食べ物と違って命と直結はしてないけれど、でも同じくらい真剣に向き合わないと存在価値が弱くなる。
・農業の人にも同じような方向を向いている同世代がいる。

じつにお日柄もよく。のどかだけどハイクオリティ。
そんなイベントを定着させている富岡ってすごい。

11月11日(水)~22日(日)わびさびや「OLN あたたかい織物展」

今回のポイントはウール系の暖かい織物と新作のマスク。
マスクは好評です。もうちょっと生産が在庫が安定したらネットでも販売しますので宜しくお願い致します。
今回のマスク、お取引先の方から「オルンのデザインで大きめサイズのマスクを」と要望され、何度も試作を重ねた結果完成した作品です。
とにかく、しのさんお疲れ様っす!
細かなダメ出し→修正は必要なのですが、縫製に関してはすべてしのさんの作業になるので、さすがに終盤はしのさん若干キレ気味でした。
でも根気よく頑張ったおかげで「作ってくれてありがとう」って言われるマスクになりました。

個人的には寒い工場ではマスクって必需品になるのでは?って思ってます。
なんせ知らないうちに鼻水がツツ―って垂れちゃうんですから。ほんとに。

新作什器とあたたかいネックウォーマー。
これが最新版のマスク。
ずれにくい特徴はそのままで、裏地が浴衣生地からオルンで織った生地に変更してます。

11月15日(日)桐生市近代化遺産一斉公開

かつては「産業観光」てワードそのものに懐疑的でしたが、気付いたら参加していました。
観光客が仕事場に来たら仕事になんかなんないでしょ!と思っていたのはわずか数年前。
今では「作りっぱなしで、知ってもらう努力もしないで買ってもらうなんておこがましい」そんな考えに変わりました。

いろんな角度から知ってもらって、そうやって少しずつ理解してもらって。
ある時、ぼくたちの織物に興味を持ってもらえたら十分やん。
あるいはOLNきっかけで桐生のことに興味持ってもらえるのも、ええやん。

11月20日(金)~29日(日)くるり

東京の状況の変化もあってリモートでの講座となりました。
ドタバタでしたけど、結構みっちり伝えることができたのではないかなと思います。
実物を手にして、実際にお会いして、そういう方がもちろん濃い時間になるけれど、でもこれはこれで非常に濃い時間になったのも確かです。
みなさんも結構やってるんですかね?こういうの。
いろんな可能性を感じます。

12月の予定

第1土曜日、第3土曜日はオルンショップ、オープンしてます。
平日に来られない方はこのタイミングでどうぞ。

年末年始の予定もまだ決めてません。

工場としては1月4日からになると思いますけど(たぶん)、オルンショップはどうしましょう?決まったらお伝えします。

来年の予定

YUKATA SHOW CASE 2020
トリエさんたちの展示会に来年も参加させていただくことになりました!
しかも京都も。
組合の展示会でしか行ったことがないので(呉服では)、非常に新鮮です。

2021/1/12~14 東京・プラザマーム
参加ブランド:季織庵工房/粟野商事、トリエ、菱屋カレンブロッソ、Rumi Rock、ひでや工房、黒木織物、スラドキー、coten、OLN/井清織物、モリンガ

2021/2/1~3 京都・マスギギャラリーM 3階
参加ブランド:Kimono Factory nono、トリエ、菱屋カレンブロッソ、Rumi Rock、ひでや工房、黒木織物、OLN/井清織物

いよいよ本題

さてさて、この一年を振り返ってみます。

まず今年はコロナのせいで大きなイベントは軒並み中止となりました。
5月は東京キモノショー。
10月はきものサローネ。
(しかしどちらも出展料が全額戻ってきたことには本当に助かりました。
すでにいろんな経費が発生しているはずなので、運営チームからの「なんとか生き残ってまた頑張りましょう!」というメッセージだと受け取っています。)
そのほかクラフトフェアやポップアップイベントなども、その多くがほとんど中止になったり、大幅な縮小になったりと。
今年はけっこう気合い入れて頑張る予定でした。
ちょっと勝負の年だと本当に思っていて。なので、様々なイベントでの売上の予定がどんどんなくなっていくあの恐怖。
この状況の中でどうやっていこうか、毎月の銀行への返済をどう捻出しようか…。
他の業種の方もそうかと思いますが、先の見えない中どうやって生きていこうかという根本的な課題です。

わずかな人数、限られた資金と時間をどう使うべきか、今まで以上に向き合った気がします。
そういえば春先に母が怪我で入院した時もそうです。

帯に付ける商品名の印刷された紙のラベルは針と糸で縫い付けます。
かつては祖母と母がそれを担当し、最近は母が、忙しい時はしのさんが手伝っていました。
しかし今はしのさんも縫製やらデザインやらで手が空きません。
そんな訳で今年はぼくが紙ラベルの縫い付けをかなり担当しました。
上達もしました。

6月にこういう画像を撮ってました。
「もくのすけ」さんとオルンのコラボ針山。
かわいいっすよね。

1人が新たな作業を覚えて何役もこなすことで、作業全体を止めないようにする、というのはぼくたちがいつもやっている対処法ですね。
そういえば。
分業は分業ですけど、一人何役もこなすという仕事の仕方はサッカーのオシム監督の本を読んだ十何年前から目指してきたところです。

今年の大きな変化の一つとして挙げたいのが、しのさんがインスタグラムを頻繁に更新してくれるようになったことです。
そしてそこに反応してくれるみなさんとのやり取りが活発になったこと。
以前はOLN/井清織物のFacebookがメインで、月に一度月刊オルンで報告するというやり方でしたが、
現在はしのさんのインスタ「@oln_sino」(オルンの公式アカウント)が日々のことをこまめに投稿してくれています。
おかげで本当に助かってます。
毎日がんばってるので、ぜひフォローしてください。
毎日ではないけどぼくもやってます。「@oln_inokiyo_orimono」こちらもよろしくどうぞ。

それとOLNのリーフレットを作ったのも今年の春でした。
今年一緒にポップアップイベントをやった桐染の平本さんにお願いしました。
これもすごく役立ってます。
すごく気に入ってます。

自分のことを自分でアピールってむずかしいです。
人にお願いして良かったと思えた仕事のひとつ。

あと、マスクをよく作った年でした。
ゴールデンウィークの頃はひたすらマスクを作ってました。
ここでもいろんな技術や知識を身に付けた気がします。
遥か昔のように感じますけどまだ半年前なんですね。

そこで得た経験が今回の秋冬用の大判マスクにつながります。
今回は前作以上にぼくたちのこだわりを詰めたのですが、買ってくれた人たちから褒めてもらったりして、すごく達成感もあります。
リピートしてもらうってスゴイことだと思ってます。

最初のマスクを作った時も、買ってくれる方から「がんばってね!」とよく声をかけてもらってました。
本当に支えられてるなあってありがたかったです。
思い出せば、そういう励ましや応援の声って以前からあったんですよね。
代金をいただいて商品を手渡すときなんかに、よく。

今年デンマークに帰ってしまった翻訳家のメッテさんも、会うたびに褒めてくれました。
「あなたたち夫婦はすごく良い。」
「あなたたちの織物がとても好き」って。
(夫婦間の仲は普通です。仕事上の付き合いが深いので戦友みたいですけど)

「お客さんからはお金を頂いてるのに、さらにあったかい言葉をかけてもらえるって不思議だね」ってよく二人で話してました。

でもそうやって励ましてもらえたおかげで続けて来られたのも確かです。

コロナから受けた仕事への影響、コロナそのものに対する考え方、みんな人それぞれですが、市民が分断されてしまうようなニュースや状況を何度か目にしました。
もともと対立するべき相手ではないのに。
そういうのを一年通して経験したおかげで僕の心境にも変化がありました。
すごく簡単にいうと「前に進もうとする人、みんな仲間」みたいな感じです。
※わるそな奴らだいたいトモダチ、みたいな感じです。
※いや、中島みゆきの「ファイト!」のニュアンスの方が近いです。

さっきぼくらは励まされながらやってきた、って言いましたけどそれは昔からそうだった訳ではないです。
むしろ応援されている先輩たちや他産地の人たちを見て羨ましく眺めていました。
その期間はもちろん長かったです。
普通、頑張っていても応援なんてされません。
頑張りたいのにどう頑張っていいのか分からない時期もありましたし。

少しずつぼくたちの織物の質が上がり「がんばってね」と声をかけてもらうこともありましたが、それは厳しい状況に置かれているからだったんじゃないかなって思います。
その点、今も変わってないのかもしれないけど、はっきり違うのは今は「ありがとう」とか「オルン、好きだわー」とかの感情と組み合わせた意味で言ってもらえている気がするとこです。

思い過ごしでも問題なし。

いずれにしてもそういう言葉は勇気や元気になるってことをぼくたちは実体験として知ってます。
本当にいつも嬉しかったです。

なので今の厳しい局面、ぼくがやるべきことは自分のことに集中することと、同じように自らの仕事に集中している人を仲間だと感じ、励まし合うこと。そんな風に考えいます。

実際にはなかなか人に会う機会ってあまりないので(コロナじゃなくても)、SNS上でポジティブな意思をを伝えることぐらいしかできませんが、お店をやっている人であればそこで買ったり、人に紹介したりしてます。

あと「人の邪魔をしない」ってことにも気を使ってます。

もともと他人を羨(うらや)んだり、僻(ひが)んだり、怖がったりしがちなぼくなのですが、最近はそんな清らかで健全な気持ちでいることを心がけています。はい。

「分業」と「依存」がまったく違うように、「自立」と「孤立」も違うんだなって少しずつ理解してきました。

自営業って「仕事」と「暮らし」が地続きなので、それぞれで感じたことを別々の問題として考える必要がないところも性に合ってます。だから仕事で学んだことが暮らしに役立つとか、その逆とか、とても多いです。

※べつに変な宗教に入った訳ではありません。
※アルフレッド・コトラーという哲学者(心理学者)の本にメチャ共感できたことが大きいです。
※「嫌われる勇気」を読んでしっくりきた方は続編の「幸せになる勇気」もおすすめ。

おわりに

振り返ってみるとものすごい逆風と荒波の一年でしたが、もともと井清織物って厳しい状況に置かれていました。しかも長年。(笑)
おかげでいつの間にか鍛えられていたみたいです。
その結果、どんな環境でも前に向かって進むハングリーさとアイデアが身に付いてきたのかもしれません。

また、素敵な人たちと沢山お会いできた1年にもなりました。
コロナの影響で移動の量は減ったのに!
不思議です。
ありがたい話です。

とりあえず来年もこれまでと同じように、地道に頑張ろうって思えてきました。
なんとなくそれが今年のまとめです。

さて、月刊OLNの2020年はこれでおしまいです。
最後までお付き合いいただきまして誠にありがとうございます。

本当に厳しい冬を迎えていますが、なんとかみんなで頑張っていきましょう!

それでは素敵な12月をお過ごしください。
そして、ちょっと早いですけど「よいお年を!」

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