月刊OLN 2020年3月号

みなさんこんにちは!
いかがお過ごしですか?

日々状況が深刻になっていくコロナウィルスの流行は人口密度の少ないこの町にも影響が出てきました。当初は「満員電車とは無縁の生活で良かった」と思っていましたが、桐生にもトイレットペーパー買いだめ族が現れるし、長男の通う小学校でも休校が決まりました。長男くん、大変よろこんでおります。

「KOUGEI NOW 2020 Kyoto Crafts Exhibition “DIALOGUE”」

そんななか、京都での展示会「ダイアローグ」に行ってきました。
関東ではあまり聞き馴染みのない展示会かもしれませんが特徴はこんな感じです。
・京都を中心に伝統工芸系のプロダクトが中心。
・広いワンフロアの会場ではなく、カンラホテルという洗練された和モダンの客室がそれぞれのブースになっている。
・初日~2日目の17時までは招待客やバイヤーのための商談会。
・2日目の17時~20時と3日目の終日がマーケットデイといって一般の消費者が1000円の入場券(そのうち500円はお買物券)を払えばだれでも会場に入ってお買い物をすることができる。
※ところが今回はコロナの影響でバイヤーズデイのみに短縮!

そして出展してみての感想です。
・会場は東本願寺という立派なお寺のすぐ隣のホテルカンラ京都。なのでロケーションもホテルそのものも素晴らしい!モダンな室内で展示するという環境はユニークだし商品も映えます。

会場のホテルカンラ京都。
京都駅から歩いて10分くらい。
塀しか見えませんけど、東本願寺という超立派なお寺です。


・運営スタッフさんの多くはデザイン関係の仕事に携わっているためか、みなさん洗練されている。さらに若い方が多いので全体の雰囲気が軽やか。
・気に入った商品はその場で誰でも購入できるという仕組みは、どちらにとっても嬉しい。
・それだけに今回の期間短縮は残念。(中止にならないだけでも良かった、とも言えます)
・例年は海外からの観光客なども大勢入場されるのでかなり盛り上がっていたという話を多く耳にしました。
・今回はお互いにマスクをしているので初めて会う方の顔が覚えにくい。
・オルンの商談と直接の販売の結果はまずまず、といったところ。(会期の後が大切)

廊下から見るとこんな感じ。
左から綾野さん、詫間さん、わたくし。
左から綾野さん、詫間さん、わたくし。
窓際のベッド近辺がオルンの展示スペース。
上の写真の背景、窓際のベッド近辺がオルンの展示スペース。
綾野さんのつまみ細工による素敵なアイテム。
綾野さんのつまみ細工による素敵なアイテム。
詫間さんは自ら海外で石を買い付け、自ら作品を作る。
詫間さんは自ら海外で石を買い付け、自ら作品を作る。
水晶から削り出された超贅沢なショットグラス!


個人的にはいろんな刺激を受けてきたことも大きな収穫になっています。
とくに212号室にて合同出展の仲間である山梨の詫間宝石彫刻さん(山梨県代表)と、 つまみかんざし綾野さん(千葉代表)のお二人にはお世話になりました。
next crafts generationという延べ4年間にも渡る勉強会もこれで終わりになっちゃうのですが、最後は濃厚でした。
鉄板焼きを食べながらの各業界、各産地、それぞれの仕事の話ができたのは今回の一番の収穫だったのかもしれません。とくに宝石の詫間さんとは家族経営、古い地場産業、下請け職人からの脱却など業界の特徴も類似点が多く、 話を聞けば聞くほど参考になることがあり、これからぼくが目指すべきところのように感じています。

それと二晩連続でお世話になった「鉄板焼きマスミ」さん。 どの料理も本当においしくて最高でした!個人的には最初におつまみで注文する「だし巻き卵」が感動的なおいしさでした。

マスミはつまりこういうお店です。
マスミはつまりこういうお店です。
分かる人には見ただけで分かる。
取り繕ってないみごとな写真。
取り繕ってないみごとな写真。
撮影は綾野さん。さすが女子。こまめな記録。ありがとうございました。

OLN shop

さて、今月の第一土曜日OLN shopのオープン日は今週末の3/7です。
小さな織物アクセサリーを作るワークショップは前回開催後にお問い合わせが続いたのでまた開催しようと思います。
費用は1500円で時間にして40~90分くらいです。
どうしてそんなに時間がバラバラなのかは、参加者の性格次第です。
かといってどちらが良いとか悪いとかもありません。
結果的にはみなさんとても満足してくれているので、自分にあったペースで大丈夫です。
受付は営業中ならいつでも大丈夫です。
人混みが気になるタイミングですが、運よくオルンショップはそこまで混むこともないので(笑)、いろんな点で安心して遊びに来てください。

ストールピンのような
たとえばこういうブローチ、というかストールピンとか作れます。

そういえば最近はOLN shopにふらっと買い物に来てくれる方が少しずつ増えてきて嬉しいです。
そのおかげで気づいたこともあります
ものづくりの人間が小売りをするのってやはり少し恥ずかしいところもあって地味に静かにやっているのですが、そのせいか、 初めていらっしゃるお客さんはお店に入っていいのか心配しながら入り口の扉を開けるようです。
ドキドキさせてしまってごめんなさい!
もっと「ここはお店です!」って分かりやすくなるように、少しずつ、できる範囲で解決していこうと思いますので気長にお待ちください。
それと、工場の中を見たい方は気軽に声をかけてくださいね。
大人数でなければ簡単にご案内できます。
昔は一般の方を工場に入れることに抵抗があったのですが、(織機は危ないし、本当に面白いのかな?とか)オルンショップをはじめたら少しずつ慣れてきました。
むしろぼくたちの仕事を知ってもらうには重要な要素なんだと気付かされてます。

東京カジュアル着物展

そしてさてさて、来週3/11,12は「東京カジュアル着物展」の開催です。
運営スタッフも我々出展者もウイルス対策はしっかりとしていきますので、呉服、ゆかた関係の皆様、お待ちしてます!
まだ完成していない新作もあるので今週の工場作業は重要です。
ちなみに今回は紳士用、いわゆる角帯のラインナップも充実させる(まだ完成してませんが)のでご期待ください。

井清織物とオルン

昨年11月にお世話になった「群馬県立日本絹の里」での講義内容をまとめた原稿を書き終えました。
濃厚な内容になってしまいました。
本来は「絹」にまつわる内容に特化する講座なのですが、ぼくたちは「自身のこれまでの歩み」を赤裸々に伝えています。
実際の講義では、前半をぼくが担当して「これまでの歩みなど仕事内容について」をお話しさせていただき、
後半はしのさんが担当して「かんたんな帯の結び方」などを楽しく紹介したのですが、
もうそういう楽しい内容を差し込む余裕がないほどに、「ぼくたちのこれまでの歩み」が濃くなってしまいました。
テーマは「小さくとも自立した織物業を目指して」です。

充実していたテレビの製作会社を辞めて30歳で織物業に入り、そこで経験した想像をはるかに超えた現実の厳しさ。
それらをなんとか乗り越えながらたどりついたオルンという仕事のしかた。

原稿を書き終える頃に気づいたことがありました。
今までずっと「何かと戦ってきたんだな」と。
そしてそういう時期は終わりにしていいんじゃないかなと。

ここ数年お仕事を通して知り合う皆さんはいい人ばかりだし、もうバリアーのような壁を作る必要がないんだなと。

いえ、もともと出会いには恵まれている方だと思います。
地元の織物関係の先輩たちには本当にいろんなことを教えてもらっているし、応援してくれる方々もたくさんいるし。

ただ井清織物が社会にとって必要な存在かどうかを問われる「ふるい」にかけられていた時期だったのでいろんな問題がバンバン噴出していたんだなと。今までのいろんなツケが回ってきたというか…。

だから警戒心のようなものが強く出すぎて人に対して壁を作っていたのかなと。
お客さんに「お店に入っていいんですか?」って聞かれちゃうのもそういうところが関係しちゃってるのかなって推測しています。(笑)

そういう反省もあって、今あらためてオルンの目指すところをしっかり意識したいなと思ってます。
工場の入り口に「先手必笑」という標語をずっと掲げているように やっぱりぼくたちの織物の目標は笑顔というかほっこりできる優しい空気感です。
戦う気持ちや緊張感は大切ですけど、優先順位の一番ではないです。
そう言ってるくせにぼくの緊張が人に伝わって、相手にも緊張させてちゃ良くないですよね。

おわりに

3月1日から有限会社井清織物の67年目がはじまりました。
昭和28年におじいちゃん(井上清)が本家から独立する形で設立した織物の会社は叔父さんが2代目、父が3代目、そしてぼくが4代目となり栄枯盛衰、紆余曲折いろいろと経験しながらもなんとか引き継いできました。
これまでにはいろんな従業員さんがいて、数多くの取引先さんもいて。
そんな皆さんのおかげでここまで来ました。
かつてとは比べものにならないほど会社の規模は小さくなりました。しかし、そんな今だからこそ「大量生産ありきの工業的なものづくり」から「自分たちの感性を活かせる正直なものづくり」へと変わることもできました。
今は最小人数でも成立できる「小さくとも自立した織物工場」を目指しています。
そして、そこを原点に成長していきたいとも考えています。

父。
60代後半から始めた工場での作業。
麻とか綿とか、手で結ぶタテつなぎは見事。
本人次第で何歳からでも挑戦できる、というお手本。

今も昔も仕事関係の方々との出会いはいつも刺激と学びになっています。
しかし今は消費者の皆さんとの出会いも大きな刺激になっています。
ぼくたちの織物で喜んでもらえたり、逆に励まされたり。(笑)

ここ数年、年賀状の終わりにこのメッセージを書いています。
「 織物を生み出す喜び。
 織物が生み出す出会いの喜び」
我ながら「ほんまやなあ」とその言葉の意味をしみじみとかみしめています思います。

そんな訳でこれからもみなさんとの出会いを楽しみにしております。

今年は花粉の量もすごいそうです。
しのさんはもうとっくに始まっています。花粉症。
あたたかな春はもうすぐ。

素敵な3月をお過ごしください。では!

月刊OLN 2020年2月号

しのさん着物月刊OLN2020年4月号

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