月刊OLN 2022年2月号

みなさんこんにちは。

いかがお過ごしでしょうか。

ぼくはといえば痛風になりました。
突然来ました。
右足親指の付け根辺りがジワーっと、ズッキーンって。
睡眠中だったんですけど、いつまでたっても痛みが引かずそのまま朝になってしまいました。

その日は足を引きずりながら工場で作業。

右足の親指のあたりは昔からちょっとした痛みはあったんですけど、ヘルニアが原因のしびれだと思ってたので、まさか。

でもまだ本物の痛風ではないようです。
いわゆる風が吹くだけで激痛、というのはここからもっと悪化した状態みたいです。

桐生のからっ風が吹いたらさらに激痛なんでしょうか。
恐ろしいです。

本物の痛風にならないように今はビールを控えてます。

尿酸値とかプリン体とか、大人の階段を駆け足で登ってます。

「人と人との関係」

今回はオルンが目指してきた「人と人との関係」について書いてみます。

というのもオルンと一緒に仕事をしてくれる人たちって、いい人ばかりだなと昨年くらいからたびたび感じていて。

最近も展示会や打合せが終わったタイミングで、ちょいちょい感じています。

ありがたいことに。

人によっては、あるいは業界によってはそんなの普通だよって思うかも知れませんけど…。

ぼくがこの仕事に入った頃と比べると、同じ仕事をしているようでいて、全然違う業界にいるように感じます。
別に以前が悪い人ばかりだった訳ではないです。

ただ単に熟練の猛者が多く、生き馬の目を抜く、そんな人が沢山いたように思います。
もちろん仲良くさせてもらった人は何人もいますし、優しくしてくれる人も多くいました。

でも身を置いている環境はなかなかにシビアな世界だったと思います。

それが最近は「苦手だなー」って人にほとんど出会いません。

驚きです。

でもそれは偶然そうなった訳では決してなくて、
時間をたっぷりかけて、少しずつ積み重ねてきた結果だと自負しています。
この積み重ねもオルンの活動です。

初めて月刊OLNを読んでいただく方もいるので、あらためて説明しますと…
オルンという名前は織物のブランド名であり、同時に活動名でもあります。

その活動とは「小さくとも自立した織物業を目指す」ためのものです。

「こうやって織物業ができたら最高だよなー」と頭の中で描いたイメージに近づこうとする活動です。
そのイメージは随時更新されていってます。

理想のイメージのひとつが、織物という仕事における「人と人との関係」です。

簡単に言うと作り手、伝え手、使い手がみんな対等、ということです。

(※ちなみに作り手、伝え手、使い手、という言い方は「”ててて”という手仕事、中量生産のメーカーが集まる展示会で使われていた言葉です。民藝でも近い言葉を使っています。分かりやすい言葉なので勝手にお借りしています。」)

もう少し丁寧に説明します。
ぼくたち作り手は生きる術として、あるいは夢の実現として「こういうのどうでしょうか?」って頑張って作って、適正だと考える対価を決めます。

伝え手は「それいいなあ」と感じたものに対して適正な対価を支払って入手し、今度は「これいいでしょう?」と使い手に伝えます。

使い手は「それいいですねえ」と感じたものに適正な対価を支払い、日々の暮らしに役立てます。

こうして3者がそれぞれ渡す思い、作品、行動、対価、そういったものが循環して皆が少しずつ豊かになります。

そこに立場の上下はなく、お互いに敬意を持って接します。

立場の弱い相手から無理矢理値切ったり、適正価格よりも安く売ることで作品の寿命を縮めたり、そういう自分だけ良ければそれでいいという駆け引きもありません。

こういう考えは商売が上手だと言われている人たちからすると「きれいごと」だし「大儲けできない」し「現実的じゃない」やり方らしいです。

でもぼくたちは、そんなきれいごとでも成立する織物業を目指すと決めました。

決めたと言っても、これしか選択肢がなかったとも言えます。

相手によって細かく違う取引条件だったり、政治のような複雑な人間関係だったり、業界のさまざまなヒエラルキーが生む凝り固まった考えだったり、そういうものにぼくは対応できず、すごく息苦しかっただけです。

そもそも価格競争ができる設備も販売先もありません。

業界の複雑な商習慣を熟知している人間なんてウチにはいません。

ものづくりって、それだけですごくストレスが生まれる時があります。
産みの苦しみっていうアレです。

でもそれは望んでいたことなので全然オッケーな苦しみです。
スポーツ選手の筋肉痛と一緒です。

でも、商売的な駆け引きのストレスまで加わってくると、…ちょっと無理でした。
あんまり融通が利かないみたいです、ぼくは。

そもそも話がまったく噛み合わない人って言うのももちろんいます。
価値観の接点がまったく見いだせないというか。

そうなると自分の仕事に誇りも持てないし、自分が何を感じているのかすら分からなくなってきます。

それで選んだ道(というか唯一残された道)が、作り手、伝え手、使い手がみんな対等、という考え方でした。

共感してくれる人がいたらいいんだけどなー、ってわずかな希望を捨てずに、そっちの方向へ舵を切りました。

ふと気付いたら、いつの間にかそれが現実になってしまった!っていう感じです。

奇跡です。

ただ、オルンを始める前から少しずつぼくたちの織物や考え方に共感してくれる取引先もあったので、可能性がゼロじゃないことは分かってました。

先日京都で「キモノショーケース」という展示会でも、オルンを始める以前からお付き合いのある方々ともお会いしました。

その人たちは、「かつてのぼくら」を知っているので今の状況を一緒に喜んでくれています。

そしてぼくも、その人たちの成長や、新たな展開を一緒に喜んでいます。

時にはお互い励まし合い、慰め合い、です。笑

それとアドバイスをお互いにし合ってます。

まあ普通です。
こういう人間関係。

ただ、この「普通」を手に入れるためにずっと戦ってきたんだなあって、しみじみ感じます。

こういう価値観を共有できる人のつながりが、これからも少しずつ広がっていったらいいなーって思います。

 「happa blanket shawl(ハッパブランケットショール)」

八寸なごや帯やへこ帯などでたびたびぼくたちのモチーフになっている「葉っぱ」。
今回は大判ショールの織物で表現しました。

オルンの大判といえば…。

2019年の秋に発表したblanket stoleで大判サイズにはじめて挑戦しました。
税抜きで2万円を超える価格設定でしたがおかげさまで評判も良く、気が付けば無事完売し、そのまま欠品状態でした。

あれからぼくたちも様々な試作や別注のお仕事を請けることでウールの扱い方を勉強していました。
もちろんその道の方からアドバイスをしていただくことも。
そんな経験を重ねるうちに「井清織物の織機や設備でも、ウールという素材をもっと活かした織物がつくれるのでは?」そんな予感がしていました。

そう、それとキモノを着る時に羽織以外の選択肢として、暖かい大判ショールがあったらいいのに!という声を聞いた時に「絶対につくろう」って決めたんでした。
そういえば。

ほど良いボリューム感が、手にしたとき、身体に巻いたときに心地よく感じられます。

そんな訳で、おかげさまでこだわりがつまった素敵な作品が完成したと自負しています!
はい。

— 素材について —

タテ糸はコットンで、ネックウォーマーの時に使っている糸よりも細くて、撚りが強めに入っている糸です。
タテ糸が一色のものと、半々で二色のものと2タイプあります。
(※berry × beigeはタテ糸が一色です。)

ちなみに、オルンで使っているタテ糸は綿100%。
「ロンフレッシュ」という防臭効果のある機能性繊維(でも肌には優しい)を使っています。

今まで特にアピールしてこなかったんですけど、けっこう嬉しい点じゃないかなって思ってます。

ベースとなる生地はウール100%、しかも交互に色違いの2色の糸が織り込まれています。
なので遠くから見た時はシンプルでも、間近で見たときに微妙にいろんな色彩を感じることができます。

シンプルだけど深みを感じてもらえると思います。

そこにボリューム感のあるウール系の糸をフワッと紋織りしています。
これは2色の違う糸を組み合わせてから管に巻いて織っています。

今回の織物はこのボリューム感のある糸をいかにフワッと織るか、というところ

— 織りとか風合いについて —

happa blanket shawlは織り方をいろいろと工夫しました。

ウールの良さを引き出したいけど、良さにもいろんな種類があります。
スーツ地のようにしっかりと高密度に織るべきか、あるいはよりフワッと肌触りや暖かさを活かすべきか。

そこで今回はいかにフワッとさせるかにこだわりました。

と同時にベースとなる生地部分を優しく魅力的にみせる織り方と、葉っぱをフワッとボリューム感がでるような織り方と、それでいてデザインとしても整理されている、という3点がいい塩梅で共存できる方法を丁寧に時間をかけて探りました。

こういう今までやったことのない方法を探る挑戦というのは面白いです。
結果的に生地全体に広がるジグザグ模様がそれを解決してくれる織り方になってくれました。

普通の方からするとなんのこっちゃって感じですよね。

ちょっと専門的な話になってしまいますが「一見ひとつの行為なのに、実は全く別の3種類の目的を達成している動き」そんなニュアンスです。
例えが難しいんですけど、ぱっと見、箒で掃除をしているだけのように見えて、実はその箒が鉄でできているため筋トレもしていて、同時にスパイ活動もしている、みたいな。

やっぱり例えが下手でしたね。

でも、そういう技術的には細かな部分がけっこう大事だと思っていて。

そんな視覚や触覚と関係の深いなんやかんやに一つずつ答えを出しながら作っていきました。

おかげでほんとに気持ちのいい作品となりました。

— 巻き方、羽織り方 —

ショップではいつも3つの方法を説明してます。

1.マフラーのように首に巻く。
布のボリューム感がかなりあるので誰が巻いても小顔効果があります。
(と思います。)

2.首にかけるだけ。
この上にコートを羽織れば素材感の違うレイヤーができてアクセントになります。そして暖かい。

3.羽織る。
カーディガンのような上着感覚としても使えます。
ストールピンなどで留めてしまうのもラクです。シャツのような高密度の織物ではないので、ピンで穴を空けても跡が残ることもないのでご心配なく。

着物の上に羽織る場合は8センチくらい(適当です)折り返してあげると、襟を作ることができるので「丁寧な感じ
」が出ます。
サイズ的にお太鼓もしっかり隠せますので、きちんと羽織っている感もでます。

— お手入れ方法 —

ご自宅で洗うことができます。

おしゃれ着洗い(中性洗剤)を使用して手洗いで。
あるいはネットに入れて洗濯機の一番優しい(手洗い)モードなどで洗濯してください。

かたく絞ったり、脱水を長時間かけるとシワになりますので、1分ほどかけたらあとは陰干しをしてください。

——

製品寸法:長さ約180㎝ ※幅約70cm
品質:毛44% 綿44% アクリル6% ナイロン6%

税込価格:24,200円(22,000円+税)

2月の予定

いつもならここで2月の予定を報告するんですけど、なんかこんな状況で全然先が読めません。
なので今月はご報告なしってことにします。

おわりに

今回も最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

ちなみに昨年から販売していたhappa blanket shawlは紹介が遅くっちゃったんですけど、在庫はあんまりなくて…。

もし見つけたら手に取ってみてください。
ぜひぜひ!

それではお別れです。
みなさんにとって素敵な2月になりますように!

また来月~。

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