月刊OLN2022年1月号

新年あけましておめでとうございます。

お正月の桐生は赤城山から吹き下ろす”からっ風”がすごいです。
それはそれは厳しく冷たい風でした。

工場の軒先はトタンの屋根になっているのですが、
釘が外れてしまった箇所は下から突き上げる風でバタバタバター!!とすさまじいです。

…できるだけ外に出たくない。

なので年末年始、撮りだめていたけどまだ観ていなかったテレビ番組を一気に片づることにしました。
大河ドラマ「青天を衝け」はまとめて何話も。
「ファッション通信」と「ベストヒットUSA」は何ヶ月分も観てなかったので
特に気になるものだけをチョイス。

で、たまたま二人でお酒を飲みながら観ていたファッション通信「イブ・サンローラン特集」での一コマ。

サンローランにとって最後のランウェイショーは感動的で。
彼と彼を長年支えてきたアトリエの職人たち(多くがベテランの女性)が、お揃いの白いアトリエコート姿で観客からの拍手喝さいを浴びて幕を閉じました。

イメージを生み出す側とそれを技術で形にする側が対等に(もちろん主従関係はあるにせよ)議論を交わし、互いに認め合い、支え合ってきたからこその姿でした。
切磋琢磨し合う関係は、仲間でもあり、師弟関係でもあり、時にはライバルにもなります。
サンローランとアトリエの職人たちが笑顔で感謝のハグをしている様子を見てぼくは
「こんな感じで人生が終われたら最高だよなあ」と独り言。
それを隣で聞いていたしのさんの反応は
「今のところ近い感じまで来てるんじゃない?」と。

へー。
そうなんだ、おれ。
いいじゃん。

たしかにぼくと織り場のベテラン片山さんとの関係はサンローランたちとほとんど同じ。
(違うのはレベルと規模。)
人前でハグし合うことはたぶんないけど。

でもぼくとしのさんとの関係は少し複雑だよなと、お酒を飲みながら改めて二人で言葉にしてみました。

「OLNの二人の仕事の仕方」

ぼくは自分についてよく分かっていないらしいです。

しのさんに解説してもらってようやく自分の状況や立場を理解することがあります。

その解説によると…

ぼくが理想のイメージや世界観を日常の中で話し始めます。
その多くは抽象的なものだったり、理念だったり。
(今はそれよりも目の前の納期!って時は無視されます)

しのさんはその世界観をカタチにするために何が必要かを日々考えます。
そうして具体的に織物や商品のラインナップを決定し、
展示会などに合わせてスケジュールを組んでいきます。
一番重要なカラーリングの指示はこのタイミングですることが多いです。

その案をさらに実際のカタチにするために織物設計、織物の図案、紋紙データ、各工程の職人さんたちへの相談、材料の手配、織機の調整などを今度はぼくが。
それと出来上がった織物に名前を付けたり、説明する文章を考えたりも。

仕上げや縫製、あるいは販売などはしのさんが主に担当。
展示会やオルンショップでのディスプレイも。

ぼくはそれに必要な小道具や什器を作ったり、写真を撮ったり。

こんな感じが日々ずっと続きます。
その都度判断に困ったときは相手に相談もしますし、
結果が上手くいかなければ上記のやりとりを何度でも繰り返します。

ラグビー選手が隣の選手とパスを出しあって前に進むようなイメージです。

服飾の学校で専門技術を身に付け、
その後もインポートブランドの販売員や
アパレルのデザイナーで経験を積んできたしのさんは
デザイン、縫製、品揃え、ディスプレイ、接客などに関することを得意とします。
忍耐強く、人当たりがいいとよく言われてます。
それとスケジュール管理の能力が高く、
今何をすべきかを理解しています。
つまり社会人として生きる力が強いです。

どこでもやっていける人。

ぼくは言うだけ番長、生活できない芸術家みたいな感じです。
ちょっと先をイメージしたり、自分の世界に浸りたがりです。
人と接するよりもチマチマした作業の方が好きで、
気が付くと仕事から脱線して何かに没頭していたりします。
なので時おり誰かに管理されている必要があったりします。
一人で起業しても失敗するタイプです。

お互いに相手より得意とする部分が見事に違うので
そこはパズルのピースのような関係でもあります。
(頼っている割合が大きいのは明白ですが…)

生活も一緒なので途中で食事もするし、季節も変わるし、お互いの機嫌もあります。
なので難しい部分もありますが、モノづくりの上では代わりのきかない存在です。

一緒に苦しい経験や小さな成功を積み重ねてきたので、ものの見方も共有する部分が大きいと思います。
どこに自分の軸足を置くか、という。

ぼくたちはファッションは好きだけど、いわゆるファッションビジネスとは距離を置いて仕事をしたいと決めているのも同じ経験をしてきたからです。

知らんぷりして立場の弱いところにシワ寄せがいく仕事の仕方や、価格競争がメインのチキンレースとは縁を切るために行動し続けてきました。

オルンの活動はこういうイメージを大前提としています。

なのでぼくらにとってのものづくりは単純にモノだけと向き合うわけではなく、
もっとウェットな部分を大事にしています。

しかし、お互いにダメだしする時はドライでシビアにもなります。

ウェット&ドライ。
陰と陽。
文系理系。
守備と攻撃。
トライ&エラー。
お互い様。
許し合い。

たった2人でもいろんな関係がありますし、役割を交代することもあります。

気付けばこんな感じでいろんな作品を生み出してきたたんだなあと、
そんなことを振り返ったお正月でした。

「moln (モールン)」

ネックウォーマーの新しいアイテムが生まれました。
名前は「moln(モールン)」と言います。
スウェーデンの言葉で「雲」を意味します。

言葉の響きもいいなあと。
olnというアルファベットが入っているところも気に入っています。

(ちなみにmolnはモルンとも読むらしいのですが、それだとオルンとあまりにも似すぎていて、聞き間違えそうなので「モールン」としました。)

あれ、前にもありましたよね?
はい、似た感じのものが。

オルンのネックウォーマーといえば織物をフワッとさせた状態の「TSUBAKI」と、同じ織物を縮絨させたて全く違う風合いにした「FELT」の2タイプがあります。

オルンの活動の最初からある商品でぼくたちにとっても思い入れの強いアイテムです。

新作の「moln」はそれらのいいトコどりです。
前より織り模様が凝ってるし、肌触りはさらにいいし、軽めに縮絨されている部分も可愛いし、と。

何度か試作をして完成した「moln」を見て決心しました。
オルンのスヌードタイプ、これからは「moln」この1種類でいこう!と。

タテ糸はコットンの40番双糸。
オルンでは定番、半分で色が変わるデザイン。
白とグレー。

ちなみに、オルンで使っているタテ糸は「ロンフレッシュ」という防臭効果のある機能性繊維(でも肌には優しい)を使っています。
たとえば「FELT」「TSUBAKI」「kiriko stole」「LOOP」、そして今回だってそう。

「「ロンフレッシュ®」には着衣時に付着した繊維上の常在菌繁殖を抑制する機能があり、この抗菌作用により防臭効果が期待できます。
薬剤は皮膚や環境への安全性に配慮された「天然有機系」を使用しており高い加工技術により繊維に結合させますので、耐洗濯性にも優れています。」
とのこと。(加藤政商店HPより)

ヨコ糸はウール100%の糸で織った部分が半分。
残りの半分はボリューム感とニュアンスがたっぷりの混合糸。

上はウール100%。
下がウールとかアクリルとかを混ぜた意匠糸。

moln、いくつかのこだわりがあるのでご紹介させてください。

こだわりの一つ目は織り模様です。
肌触りの向上と、ウールの縮絨加減のコントロールをしつつ、織りの楽しさが伝わるデザインになりました。

幾何学模様との間にある無地っぽい部分は別の作品作りの時に発見した織り方で、なんとも言えない感じがすごく気に入ってます。

これが新発見(個人的に)した織組織。

言葉では伝えにくいけど、編み物のような、なんだろう?って感じが好きです。

ー--------

こだわりの二つ目はその肌触りです。
ぼくたちは色んな織物を手掛けています。
それも結構ゼロベースから始めることも多いです。
そのおかげで時間はかかっているけど、いろんな遠回りや挑戦をしてきました。
ウールの扱いに関してもいろいろと経験中だし、成長しています。
そうやってその時できるベストを更新しています。

ウールのトロン、フワッとしたほどよい縮絨。
肌触りが気持ちいいです。

そんな訳で、企業秘密なノウハウもいろいろあって、フワッと気持ちの良い状態に仕上げてあります。

ー------

こだわりの三つ目は織物の両端を結んでフリンジにしている点です。

いわゆるマフラーとの大きな違いがそこにあります。

海外ではインフィニティスカーフ(インフィニティ=無限大∞のマークのようにして首にかけるため)と呼ばれている形状です。

この形状の良いところはきつく結ばなくても絶対にゆるんだり、落としたりしない、ってことです。

結ぶ必要がないので結び方で悩む必要がないのも助かります。

で、実際の巻き方は2パターン。

その1。
一度首にかけてからインフィニティの形にしてもう一度首にかけてできあがり。

その2。
輪っかを広げずに首にかけて、左右どちらかの輪っかに反対側の端を差し込めば出来上がり。

ほら、やっぱり簡単。

でも簡単なのにそれっぽくなります。
鏡を見なくてもそれなりになります。

桐生のオルンショップではすでに店頭で販売していますが、ウェブショップももうすぐです。

そんなmolnですが、どうぞごひいきに。

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最後に今月の予定などを報告します。

キモノショーケース 2022年1月11日~13日

年明け最初の展示会です。
オフィストリエさんが中心となって立ち上げて、ついに10年目を迎えたそうです。
この合同展示会。
すごいです。

今回からは新たなブランドも加わり、さらに魅力が増しています。
毎回内容の濃い商談や出会いがあるので、ぼくたちにとっては重要な展示会です。

キモノショーケース2022 spring&summer
東京1月11日(火)12日(水)13日(木)
11日13時~18時
12日9時30分~18時
13日9時~17時
東京日本橋浜町プラザマーム3階
参加ブランド:Torie/黒木織物/季織苑工房 粟野商事/OLN 井清織物/菱屋カレンブロッソ/Rumi Rock/ひでや工房/Sladky/coten/Shi bun no San

京都1月31日(月)2月1日(火)2日(水)
1/31 13時~18時
2/1 9時30分~18時
2/2 9時~17時
京都四条烏丸マスギギャラリーM
参加ブランド:Torie/Kimono Factory nono/黒木織物/OLN 井清織物/菱屋カレンブロッソ/Rumi Rock/ひでや工房

Fコネクト pop up @高崎髙島屋 1月19日~2月8日

群馬県には高崎市に髙島屋があります。
こちらには中里さんという変わり者ですごくオシャレな若手バイヤーさんがいます。
もちろんすごくいい意味での変わり者です。
誰よりも百貨店ビジネスに危機意識を持ちながら、でも百貨店だからこそできることを追求しています。
休日は自費で全国各地の産地へ勉強しに出かけています。

そうして出会った地元のメーカーのみならず全国の優良ブランドの商品を扱っています。

自分の目利きを信じ、時にはリスクも取りつつ小売業として結果を出しています。

ぼくもかつて「こういう素材の試織依頼が来ているんですよ」と話した時に、中里さんから「それはすごい話ですよ!なぜなら…」と教えてもらったこともあります。

その中里さんが4Fで独自に立ち上げた売り場がFコネクトです。

そこでオルンのポップアップをしてくれます。

中里さんもこれまでにいろんな壁に直面したとは思いますが、このコロナ渦にあってもしっかりとファンを作り続けています。
販売の企画をして終わり、ではなくて、しっかり現場スタッフに産地のことと自分の思いを伝え続けている結果なのだと思います。

そういえば昨年(その前かな?)、テレ東の「ガイアの夜明け」で中里さんの挑戦が特集されてました。

ぼくたちの代わりに髙島屋のスタッフさんたちがしっかりと商品説明をしてくれます。
お近くの方はぜひとも宜しくお願い致します。

おわりに

今年の月刊オルンはダラダラと書かずに
・OLNについて
・商品紹介
・活動スケジュール
という3点をキレよく報告できたらと思っています。
(’また長くなってましたが…)

特に「OLNについて」は毎月の月刊オルンを熟読するマニア(の方がいるのです。感謝!)以外の方、あるいは初めて読んでくれた方にも理解してもらえるように、丁寧にいろんな角度から伝えられればと思っています。

そんなこんなで今年もよろしくお願いします。
これからまた一年、地道に、楽しく、自由に、正直に生きていこうと思います。

それではまた。

みなさまにとっても素敵な1月になりますように!

月刊OLN2021年12月号

月刊OLN 2022年2月号

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