月刊OLN 2019年12月号

みなさんこんにちは!

先日 東京都現代美術館 で開かれている 「ミナ ペルホネン/皆川明 つづく」 のレセプションパーティーにお邪魔してきました。なんて言うと ミナ ペルホネン にテキスタイルを作っているの?なんて思われそうですが、ちがいます。(笑)
ちょっとした縁があって備品を協力しているだけです。
でもそれだけでも個人的にはすごく嬉しくて。

東京都現代美術館、リニューアルオープンの第一弾だそうです。
寄せられる期待の大きさがうかがえます。

「つづく」https://mina-tsuzuku.jp/
「東京都現代美術館」 https://www.mot-art-museum.jp/

ぼくは30歳で織物の仕事についたので、年齢的な遅れをなんとか取り返そうといろんなことを知ろうとしていました。その頃「装苑」という雑誌をつづけて購読していました。刺激や学びに溢れたその雑誌の中に他のページとはちがう雰囲気(ぼくにはそう思えた)の連載コーナーがありました。そこには素敵な世界観の写真とそれに添えられた印象的な日本語の詩がありました。

当時ぼくのおかれた仕事環境 や作っているものからするとずいぶんとかけ離れた世界でしたが、好きでした。

ひたすら工場や作業場の掃除と補修、あるいは整理加工や縫製のために市内を車で走り回る日々。糸を触るよりも織機の修理、調整のため鉄や木と向き合う工業的な日々。父が経験した過去の成功体験をなぞり、仕事だからと自分の感性は置いてけぼりにして一日でもはやくこの仕事、この土地に馴染もうとした日々。
(そのことになんの疑問もありませんでしたが。)

やがてその連載は皆川明という日本人男性デザイナーのページだと、なんとなく認識していきました。。

ぼくは皆川さんの言葉が好きです。
その言葉と行動がきれいに伴っているところも好きです。
自分に正直なところ、自分への向き合い方、人や社会との向き合い方も。
今回の企画展でもやはりそう感じました。

でももう何年か前から皆川さんの本を買って読んだりするのは止めています。
会場でもテキスタイルの写真は撮りませんでした。
お会いできた時も記念撮影は避けてます。
対等の立場になってお仕事をしたいと思っているので、影響は最低限にしておきたいのです。

そして皆川明さんの静かで丁寧でユーモアがちょっと入った、そして真面目な「伝え方」が好きです。(言葉だけではなく、デザインを含むさまざまな要素で)

オープニングセレモニーはこの盛り上がり。
時間ギリギリに到着したぼくたちはみなさんの後頭部を拝見しながらスピーチを聞いた。
ディスプレイ什器を装飾しているのは紋紙。
白が淡く塗られていて、優しさと清潔感とクラフト感が気持ちいい。
テキスタイルの写真は撮らないといっていてこの記念撮影。
はい、楽しかったです。

オルンは先月 「伝える」「伝わる」 ことに関していろんな経験をさせてもらいました。
そのことをお話ししたいと思います。

「from 埼玉のみなさん」

11月7日 埼玉から「着物好きのグループです!」という6名様がオルンショップに来てくれました。

事前にメールでやりとりをした際、このブログやFacebookを読んでもらっていると分かりましたが、実際にお会いしたらきものサローネでお話しした方もいて驚きました。さらには井清の帯を締めて来てくれた方も !

そのため、OLNあるいは井清織物の織物をみなさん何となくは知っていて、それぞれの織物の説明をすると、一度話すだけで伝わっているなあと感じるほどです。なんか今までとちがいます。なんでしょう、このウェルカムな感じ。アウェイ感ナシです。すごく聞き上手な人が集まったグループなのでしょうか?いつもだったら自己紹介をゼロの状態からはじめて、緊張しながら丁寧に説明するばすの場面なのに、この日は不思議な安心感があります。

シンプルな帯。でも凝ってる帯。
みたいなことを説明しています。

ちなみにぼくたちの織物のコンセプトはこんな感じです。
・シンプルな織りの帯で少しドレッシーさが出るような帯。
・帯じゃなくても価値が成立している織物を帯として織る。
・強い主張はしないけど、存在感は確かなもの。
・染めにはできない立体的な表現の織物。
・洋服とならんでも違和感のない世界観。

この感覚を受けて入れもらえるとぼくたちも嬉しいし、助かります。

ついでに仕事のしかたのコンセプト。
・製造過程で立場の弱い誰かにシワ寄せが集まらない仕組み。
・技術や商品の取引はお互いに対等に、フェアに。
・経済よりも人間を優先させるための仕事の仕組み。

どれも普通のことなのだけれど、実際に仕事となるといろいろ難しい問題があって、「普通」をやり切ることのむずかしさ。(オルンはブランドであり活動なのです)

こういう事をどうやったらうまく形にできるんだろう、伝えられるんだろうと、ずっと考えてきて、試してみて、反省してまた考えてと、少しずつ実践してきたつもりです。

工場だけでのものづくりから、OLNというブランドを使って外に飛び出し、SNSを使ったり、ブログを書いたり、オルンショップをオープンしてみたり、クラフトフェアに出てみたり、そしてサローネに出てみたり。やれることはなんでもやってやろうという気持ちでやってきたら、ようやく、少しずつ実を結び始めてきたのかなと思えました。

とても盛り上がってくれて嬉しかったです。
わたらせ渓谷鉄道のトロッコ列車で観光してから来てくれました。

産地展ではなく、さまざまなブランドが集まる合同の展示会などに出ることで、少しずつ小売店の皆さんにはオルンの商品とぼくたちの存在を覚え始めてもらっている気がします。

少しずつだけど一般ユーザーの方たちにも認識されていったらいいな、と思っています。少しずつでいいです。ゆっくりで。(いや、早い分には構いません。)

その日の夜、先に仕事を終えた父と少しだけ今日の出来事を話しました。
父の感想は「着物を着た人たちがあんなに楽しそうに帯を買っていってくれて、ありがてえ話だな。こんな日が来るなんてな」と。
感慨深げです。

ですよね。
同感です。

さあ、また明日からがんばろう!

from デンマークの皆さん

村上春樹の小説をデンマーク語に翻訳している翻訳家のメッテ・ホルムさんという女性がいます。若かりし日、織物職人を目指しフランスで修業をしていた経験のあるメッテさんは縁あって今桐生で暮らしています。正確には「桐生を拠点に」、なのかな。

ある日のこと、ninow(ニナウ)でもお馴染みの川上由紀(桐生整染 )さんが井清の工場にメッテさんを連れてきてくれました。ショップを見て、工場を見て、いくつかの質問に答えたりして。メッテさんは桐生の中で織物工場を探しているところだと話していて「ウチでよければどうぞ」なんてやりとりをして。でも、立派な会社や工房は他にもいろいろあるし、ちょっとウチじゃ申し訳ないね、とぼくたちは思っていました。川上さんとメッテさんがいた時間はすごく空気が澄んでいて気持ちがよく、最後はみんな笑顔でお別れしました。

2019年、今はスマホが翻訳してくれる時代。
帯も見てもらった。
撮影:川上由綺さん
記録を残すことをいつも忘れる井上家なので、カメラマンがいるとたすかります。



後日、こんどは大風呂敷の山田さんが案内をして、桐生の中心市街地から自転車で来てくれました(普通の人だと20~30分かかるはず)。メッテさんは「ちょっと遠いけど、デンマークの人ならたぶん大丈夫」と笑ってまた元気よく自転車をこいで帰っていきました。山田さんはちょっと大変そうに見えたけど、「ダイナマイッ!」って調子で慣れた様子で楽しそうに先頭を走っていきました。

その日の週末、長男の運動会を見に近所の小学校にいると、しのさんのインスタにメッテさんからのメールが届きました。どうやらオルンショップに来ているとのこと。ぼくがダッシュ(実際はジョギングのゆっくりなやつ)で戻ると父が対応していてくれ、珍しい外国のお客さまに興奮していました。メッテさんが連れてきてくれたご夫婦はまだサンプルとしてオルンショップに飾ってあったブランケットストールを買いたいと言ってくれました。

実はメッテさんが初めてオルンショップに来てくれたとき「すごくいい。きっとデンマークの人が好きなデザイン」だと褒めてくれたのがこのブランケットストールでした。メッテさんは洋服やバッグや小物などのセンスが良くて、すごくオシャレな人なのでこんな人に褒められることが素直に嬉しかったし、お世辞だとしても十分満足でした。

メッテさんが肩にかけてるけど、買ってくれたのは左の女性。
写真を撮りながらみんな大ウケです。
メッテさんのそういうお茶目なところが魅力。


そして先日、11月13日、18名のデンマークからの旅行者が全員レンタル自転車でオルンショップに来たのです!たぶんこの人数の外国人がまとめて自転車でこの田舎道を走る姿に、見かけた人たちはさぞかし驚いたことかと思います。

ぼくが子供のころでも18人が遊びにきたことはありません。

ぼくの説明をメッテさんがデンマーク語に訳し、どの辺に関心を持ったのか分かりませんでしたが、みなさん、楽しんでいるように感じました。

ショップでは簡単な説明しかできませんでしたが、メッテさんがみんなに通訳したり、みなさんそれぞれ質問してきたりして盛り上がりました。
このこの日のために織っておいたブランケットストール、定番のネックウォーマー、麻綿のプラドストール、みなさん喜んで選んでくれました。

それぞれご自身に似合うものを選んでいました。なので、ぼくとしては「本当に気に入って買ってくれた」ことが嬉しかったです。難しい理屈とかではなく、「これがイイ!」とか「ナイス!」とか。言葉が通じなくても、いやむしろ通じないからこそ、異文化同士だからこそ、自分たちの織物を通じてコミュニケーションを取れたってことがなんとも素敵です。

デンマークでは染め、プリントはあっても「織り」は珍しいのかもしれない。

そもそも。
「オルン」というフレーズ、北欧の響きがあると個人的に思っていて、勝手にシンパシーを感じながら始まりました。その後も陶芸やらテキスタイルやらと何かにつけて「北欧」の存在は近くにあって、タケさん(伊藤丈晃ヴァイオリン工房)に借りた「別冊太陽・デンマーク家具」もまだしばらくウチの本棚にいそうです。(タケさん、読むときは言ってね。)

いつかちゃんと仕事として北欧に行くぞ、いや、行けたらいいな、ぐらいの気持ちは常にあったのですけど、なんだか少し近づいたような気がします。

飛行機に乗って現地に行くにはまだまだ道のりは遠そうだけど、でもオルンの織物は今デンマークで日々の暮らしを彩っています。すごいですよね!

このあとぼくも自転車に乗ってこの先頭を走りわびさびやさんへ向かった。
デンマークでは環境への意識が高く、自転車で何十キロも移動することが珍しくないらしい。

さて、他にもいっぱいお伝えしたいことがあるんですけど、かなり長引きそうなのでサーっと駆け足でお伝えして、最後に12月の告知を致します。

11月3日「桐生きものの日 ワインパーティー」
実行部隊の青年会も残り5名。それと組合職員2名の少数精鋭。今年もぼくは司会の係なのですが、台本をプリントアウトするのを忘れて開演直前に大パニックに。dropboxからデータを発見することに成功し、史上初スマホを台本にする司会進行係が誕生しました。

11月2-4日「有鄰館ものづくり展」
いろんな発見や収穫、もちろん売上もありましたが、個人的には力不足を感じ、いろんな課題が残りました。

11月6日「八王子(だけじゃないけど)のみなさん」
奥田染工場の奥田さんがガイドとなって坂本呉服店さんたちを桐生のいろんな所に連れて来てくれました。坂本さんは新桐生駅で食べ物が売っていないことに驚いていました。
以前から注目していたうなぎの寝床の白水さんとご挨拶。気持ちいいくらいに頭が良くて、先を見ていて、勉強してて。この人からいろんなことを学びたい!

夜は参夕さんで。素敵な夜でした!

2テーブルあって手前がよく食べてよく飲む席。大皿が来てもすぐになくなる。
奥のテーブルはお上品な女子の席。食事の減りがゆっくり。
オルンも奥田さんも白水さんも坂本さんも、みんな手前。

11月8日「丹後のみなさん」
全国つくりべの会でかつて一緒に楽しく飲んだ高美機業の高岡さんが、20~30代だけの若手グループを率いて桐生まで見学に来てくれました。すでに立派な工場、会社さんは見学済みだと分かったので、ぼくは同業者だからこそ伝えられるリアルな声を伝えました。恥ずかしい部分もありますが、少しでも役に立てばと思って。ぼくは直接だったり間接的にだったりで、これまで丹後産地にはお世話になっています。すこしずつ恩返しを。そしてまた教えてください、いろいろと。
こちらのグループは産地見学の収穫をきちんとレポートに残されているところがすごいです。「ひらく織」。民と官がしっかりと熱量を持ってタッグを組んでます。

お揃いのダウンが仲の良さを物語ってます。
与謝野町という地域だけでも若手がこんなにいるとのこと!

11月9日「群馬県立絹の里 日本絹の里大学」
講師といってもオルンの活動を説明しただけです。
でもいざまとめてみたら結構たいへんでした。そして客観的に自分たちを見ることができてよかったです。
人生で初めてパワーポイントを使いました。(これが怪しい講師が使いこなす例のヤツか…。)
しのさんは「大人のためのへこ帯」の締め方講座をやってくれました。

11月10日「藤岡おかって市場 動楽市」
2回目なのであまり緊張はせずに楽しめました。
でお2回目なのに高速道路の乗り換え(?)で間違えて、いつのまにか埼玉を突き進んでいた時はあせりました。
前回来てくれたお客さんがまた来てくれたり、新しい出会いがあったり、それと他の作家さんが素敵だったり、毎回いい影響を与えてくれます。

11月16日-24日「くるり大丸東京店 桐生展
泉織物さんとのご一緒させていただきました。恐縮です!
(太郎さん、ずいぶん会ってませんね。)

11月16日の初日、久しぶりに大丸東京店にお邪魔してきました。くるりさんのスタッフはあいかわらずお美しいです。スタイリッシュな着物といえばやはりくるりさんですね。ちなみに先日の「絹の里大学」で講義を受けていた生徒さんがお買い物にきてくれましたと、店長さんから報告をいただきました。
…講師やってみて良かったです。

くるりさんのあとお昼を食べて銀座伊東屋さんへ。
この冬からネックウォーマーの取り扱いが始まったので、フロアの担当の方に商品説明を兼ねて販売応援。
売り場での感触を桐生に持ち帰り、ネックウォーマーの冊子を作ることに。

このあと新木場のCASICAに行って、最後に清澄白河の「皆川明展」へ行って、という怒涛の4軒はしご出張という強硬スケジュールでした。

12月の告知

現在わびさびやさんで「OLN2019AW」開催中です。
「ブランケットストール」「ネックウォーマーLOOP」「ムニ・クラッチ」「ムニ・カード&コイン」これら新作4点ほか、niwaさんのアクセサリー、今回はOLNの帯に合わせて くるりさんのデニム着物もご用意しています。
12月8日までです。

12月12日~17日「群馬セキスイハイム ギャラリーeyes OLN展」
昨年に続いて2回目です。秋冬の新作がメインになりますが、14日と17日に行われるワークショップも楽しみです。今回は手織りでシルクのアクセサリーを作ります。今回のワークショップは今までで一番洗練された内容になる予定。予約制ですのでご興味あればぜひ!

おわりに

どうですか今回の月刊OLN。長かったですか?長すぎましたか?
これでもだいぶ省略したんです。本当に。
これ以上は仕事に影響がでるので、もうこの辺で終わりにします。

ブログが長引く一番の原因は日々におきた出来事をなかなか公開しないで、月末までため込んでしまうからだとしのさんに指摘されました。確かにそうかもしれません。

そこで、今月からの目標
・日々のできごとはOLN/井清織物のFacebookで備忘録的にマメにアップする。
・instagramはoln_inokiyo_orimono(ヨシヒロ)で週一でいいから世界観の伝わる画像をアップ。
※しのさんのインスタはoln_sinoです。
・月刊OLNでは伝えたいことをしぼって。(今回の「伝える」はそうしたつもり)

はい、がんばります。

商工会議所の企画に申し込んでカメラマンの七五三木さんに、カメラの基本の「き」を習いました。
技術だけでなく、そもそもの考えかたも。
「作った本人が一番その魅力を知っているはずだから、何を伝えるべきかを撮る前によく考えてみて」と。

そうなんです、作ったあとのこと、ちゃんとやりたいと思っています。
「作る」をきちんとやって、「伝える」を正確にやれば、自然と「売れる」につながると考えています。これからはもう「作りっぱなし」では社会に必要とされないんじゃないかと思っています。

でも「伝える」って「作る」と同じくらいむずかしいとも思っています。
正直、なかなか上手くいかず壁も感じてます。
でも乗り越えたいって気持ちの方がやっぱり強いです。

「小さくとも自立した織物業をめざして」
これが講師をつとめた時の話のテーマです。
あきらめずにコツコツやっていきます!

それではみなさんよい12月を!

月刊OLN 2019年11月号

月刊OLN 2020年1月号

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