月刊OLN 202年10月号

みなさんこんにちは。

いかがお過ごしでしょうか。

こちらは毎日慌ただしく、それなりに楽しくやっております。

夏の終わりごろから続くこの忙しさですが、別に商売繁盛してまっせ!ってことではありません。
単純に人数が少ないくせに色んなことをやっているので、いくつかの仕事や雑用やなんやかんやが重なったりするタイミングで、すぐにバタバタしてしまっているだけです。笑

これがずーーーっと続くようであれば従業員募集!となるのかもしれませんが、そういうことではなく…。
(※時期によっては織機を動かさないって時もあります。)
(※寄せては返す仕事の波ってやつです。)

とは言え、最近は忙しい時だけお友達に縫製作業を手伝ってもらったりもしています。感謝感謝。

そのおかげでしのさんも工場に入って織機を動かすことができるわけです。

現在、井清織物には織機を動かせる人が、ぼく、しのさん、父の家族3人と、
一番の腕利きでベテラン、片山さんを加えての4人。
(片山さんは目の手術でしばらくお休みをしていたのですが、先月から無事復帰。
ちょうど納期が迫っているタイミングだったので助かりました。)

織り場専門は片山さんのみで、井上家はそれぞれなんでもやります。

父はヨコ糸の準備だったり、新しいタテ糸を一本ずつ繋いでいくタテつなぎとか、工場での準備作業もやってもらっています。
それと簡単な仕上げ作業も、ですかね。
母は体の具合が悪いので仕事は引退してのんびりやってます。

しのさんは時間の長さでいえば縫製をしていることが多いですが、型紙を作ったり、検品したり、納品作業だったりと、まあいろんなことをやっています。
もちろん定期的にデザイン作業もしていますが、ミシン部屋で実際に手を動かしている時間の方が圧倒的に多くなります。
そういうわけで手伝ってくれる仲間の存在が重要だったりします。

ただ、帯の検品とか補修とかは織物の構造を理解していないと難しいので、そこは他の人に任せることができなかったりします。
最近のオルンの織物は父でも理解できていないものがほとんどなので、結局しのさんが担当するのがベストです。
手先が器用で、仕事が丁寧ってのもあって。

ぼくの仕事は工場でやることや事務作業を含めた雑用全般です。
織機の調整から各工程の職人さんへの発注とか。
織物設計したり、請求書を出したり。
お願いごとをしたり、あやまったり。
ピンからキリまでほんとうに何でも屋です。

でも実際は家族の3人に関しては自分の専門以外の仕事もかなりこなしてます。
サッカーで例えたらほぼ全部のポジションをこなせるようなイメージです。
状況によって、攻め手を担当したり、守りを担当したり、時には全員でキーパーをやったり。

今はその慌ただしい感じをギアを上げてやっている感じなので、ここしばらくは毎日みんなで「走っている」ような状態です。
お昼休みの前とか、終業時間の1時間前とか、気持ち的には息切れしてゼーゼー言ってます。

しのさんとか、それに加えて食事を作ったり、子供の学校のフォローとかもしてるんですからすごいっす。
「もっと手伝って―!」って声が聞こえてきそうで怖いっす。

さっきまで黙々と仕事をしていたのに数分後には食事の準備をササっとやっちゃって。
しかも毎回違うメニューで美味しく作っちゃって、すげえなあって感心してます。

ああいうのって才能ですよ。

別にご機嫌をとろうっていう魂胆ではありません。
(むしろご機嫌を伺うとウザがられるので、しないようにしてます。笑)

ただ、最近そう思うことがたびたびあったので、これは月刊OLNで報告しておこうと思っていただけです。
「さっきまで工場や縫製で頭と手を使ってヘトヘトになっていたのに、なんでもうご飯ができてるんだろう?
そもそも、いつメニュー考えたんだろう?」って。

ちなみに同居している義母が下ごしらえをしてくれているらしいです。

ちなみにもう一つ。ぼくと父は一緒に食事をすると喧嘩になります。そう分かってからは別々に食事をすることにしています。笑

そういえば。

インスタをフォローしてくれている方から、
「家族(父、ぼく、しのさん))が仲良くていいですね」なんて言ってもらったりもするんですけど、
実際はそれほどでもなくごく普通です。

たまたま一緒にいる時間が普通の家族より多くて、しかも仕事仲間として話題に出ることがあるから
そう思ってもらえるだけで、至って普通です。

夫婦間ではお互いにイラっとすることもあるし、父子の会話はあんまりしないし(価値観が違いすぎて)。
なので普通です。

日中一緒に仕事をしていて本当に距離が近すぎるので、ある程度ドライにしていたり、
干渉し過ぎないように気を付けるようにしています。

そんな具合で日々が濃厚です。

10月の予定

10月は面白いイベントに2つ参加します。
どちらも地元から離れた場所です。
そちらの予告。

KIMONO SALONE 10月23日(土)、24日(日)

今月の一大イベントは何といってもこれです。
きものサローネ。
このイベントはぼくらのような産地のメーカーにとってはリアルな反応をいただける展示&販売会で、ユーザーさんたちと直接交流を持てる貴重なイベントなのです。
ただ主催者側の狙いとしては商売とかは二の次で、着物という文化を幅広い方々に知っていただくというのが主な目的になっています。

日本にはどんな産地があってどんなものが作られているのか。
着物に関連するさまざまな小物やアイテムはどんなものがあるのか。
着付け師の仕事とは?
自分に合う色目とは?
そういうイベントやファッションショーなどもあったします。
いろんな角度から今の着物事情を知ることができます。
伝えたい対象は着物ユーザーはもちろんでですが、まだ着たことがない方も是非って感じで大歓迎です。
しかも全国の着物業界人も注目しているらしく、みなさん一般客として入場して情報収集しているようです。

ちなみに価格の表示方法などは厳格なルールで決められていて
変な販売が行われないような仕組みになっています。

根拠のない高価な値段をつけて「今回は半額セールです!」とか。
何人ものスタッフが取り囲んで、購入するまで帰さないとか。
無料ですって言って、そうじゃないとか。
そういう悪徳業者ってたぶん今でもいると思うんですけど、
とりあえずぼくが普段一緒にお仕事をさせてもらっている人たちに関してはそんな人、一人もいないです。

カジュアル着物展に出てくるメーカーさんとか、
着物サローネに出展している方とか。

なのでみなさん安心して遊びに来てください。

とか言って、本当はきものサローネに関しては初心者です。笑

一昨年に出展した時は、果たしてぼくたちの織物が受け入れてもらえるのだろうかと緊張と不安でいっぱいだったぐらいです。

でも、思いのほか、なんとかなってすごくホッとしたのを覚えています。

そういえば。

会場には各出展者がコーディネイトしたトルソーが置いてあって、
入場者によって人気投票が行われます。

最終的に順位が発表されるんですけど、その投票用紙に投票してくれた方からの一言コメントも記入してありました。

完全アウェーのつもりで参加していたので、
まさかこんなに嬉しい反応があるなんて想像もしてませんでした。

みなさんあったかいなあって。

しかもぼくたちが表現したいこともちゃんと伝わっていて。

そんな訳で、一昨年のこのイベントでぼくたちはいろんな方に励まされたり、勇気をもらったりました。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。

ちなみに、井清織物がずっと手掛けている八寸帯や半巾帯とかのジャンルは呉服業界の中では小さい世界です。

振袖とか七五三とかそういうセレモニー用のものとか、有名作家さんの一点ものとか、手描き友禅とか。
ぼくもよく理解していないんですけど、そういうものが一般的らしいです。
いわゆる街の呉服屋さんにとっては、オルンの帯とかまったく興味の対象にならないみたいです。

それでもニッチなところで純度高くものづくりをすることで
自分たちの居場所を確保しているのが今のぼくたちです。

そんな小さな世界であれやこれやと頑張ってるって訳です。

くるりさんのデニム着物とOLNのへこ帯”hecco”。

KIMONO SALONE 2021
とき:10/23(土)、24(日) 10時~18時
ところ:東京国際フォーラム

それと重要なお知らせ。
23日の土曜日はウチの子供たちの運動会とかぶっているため(涙)、しのさんは運動会を見届けてから東京へ向かうので到着は夕方になると思います。なのでしのさんに会うのが目的の方は24日のほうが間違いないです。23日に来ていただいちゃうと、ぼくしかいなくてガッカリすることになります。

ハタオリマチフェスティバル 10月30(土)、31日(日)

ご縁をいただき参加させていただけることになりました。

場所は山梨県の富士吉田。
繊維産地として全国的に有名な土地です。

そしてテキスタイルを軸に街ごとひっくるめたイベントがすごく有名。
それが「ハタオリマチフェスティバル」
略してハタフェス、ってことなんですね。

オルンを始めた頃にハタフェスのチラシを見て、なんだか楽しそうで羨ましく思ったのを覚えています。
それ以来「今っぽい感覚の繊維産地」っていう風に認識しています。富士吉田。
ようやく初上陸。

当日どんなアイテムを持っていくかはまだ未定なんですけど、
まだ完成してないウール系の新作が出来上がっていれば持っていきたいなあ、と。

そしてちょっと交流も深めてこようかと。

9月の報告 東京カジュアル着物展

インスタでも報告したかもしれませんが、おかげさまで満足のいく結果になりました。
(もちろん結果が悪くても、いつもの空元気でポジティブ発言しますけど。笑)

今回は特に、頑張って生み出した新作に注文が頂けたことが嬉しかったです。
「今まで通りの頑張り方でいいんだよ」
「ここまでやってきたことは間違ってないよ」
そんな風に背中を押してもらったような気分です。

あまり一喜一憂はしないようにしてますけど、やっぱり、評価してもらえるっていうのは単純に嬉しいです。

東京カジュアル着物展に参加してから3年目かな?
この業界に少しずつ馴染めてきたというか、世の中に受け入れてもらっているという実感を少しずつ持てるようになってきました。
ありがたい話っす。

あとがき

もともとキモノ、和服になんてまったく縁のなかったぼくが織物の世界に飛び込んで早16年目。

どうやったら織物を仕事にして食って行けるようになるんだろう(会社の借金を返せるんだろうという意味で)と日々格闘してきました。
織物の仕事内容そのものは自分に向いていた気がします。
けっこう早めにその楽しさを感じていました。

でも自分で着物を着る機会はそれほど多くなく、とにかく作ることに集中してきました。

オルンショップを始めてから、他産地の織物を扱うようになるにつれ、仕立などを含めた着物全般にもっと理解を深めたいという思いに少しずつ変化してきました。

臼井織布さんの伊勢木綿。

で、最近思うことがあります。
キモノって、衣服としても、単にモノとしても、文化としても、生活様式としてもすごくいいんじゃないかなって。
(今さら当たり前のこと言わないで!と怒られそうですが、それは今は置いといて)

普通に考えたら面倒くさいと思うんです。
いろんな手間もかかりますよね。
どんどんストレスフリーな方向に進化していく現代の中では真逆のようでもあります。
(何言ってるの!着物ほど楽なものはなのよ!って叱られそうですが、とりあえずは今は置いといて…)。

そういう手間とか様式がすごくいいなって思ってます。
生活が欧米化して、いろんな発明のおかげで便利になっているからこそ。
先進国の基準に合わせて世界が同じような価値観、文化へと向かっている今だからこそ。
逆説的ですけど。
まだうまく説明はできないんですけど感じてます。最近。

やっぱりこの国の先人たちのいろんな知恵や歴史が詰まってるんですかね。

今の自分ではまだ全然理解できてないんですけど、
もっと後になった時に、ストンと気持ちよく腑に落ちるような気がしていて。
「ああこういうことなんだな。いいじゃん、着物を着るって。ニッポンいいじゃん」って。

そういう時が来そうだなって、心がザワザワしたりしてます。

もちろん「だから着物を着ましょう!」って言いたいわけじゃないです。
行動の強制って、されるのもするのも苦手なもので。

それにぼくは普通に洋服も好きだからクローゼットは着物だけ、ってことにはならないと思います。

ちなみに安くて着心地が良い機能性の衣類、ぼくも着てます。
特に夏の工場作業はそういう衣類なしでは耐えられません。
本当に便利で助かってます。

そういう衣類とは全然ちがうところに着物の存在価値があるのかも知れません。

ぼくたちが展示会などで出会う全国の作り手さんたち。
そういう人たちから少しずつ仕入れたりするんですけど、どういう人が作ってるか知っているし、価格が謎めいたりしないし、すごく健全で豊かで文化的な買い物だなって思ってます。

以前、デザイナーの皆川明さんが
「自らの労働で得た対価は、誰かの作品と交換するのが望ましい」って言っていたのを思い出します。
で、着物とか帯とかって、そのイメージにすごく近いじゃん、って。

そんなことを最近考えてました。

さて、今回も懲りずに最後まで読んで頂きましてありがとうございました。

みなさんにとって素晴らしい10月になりますように!

ではまた来月。

月刊OLN 2021年9月号

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