月刊OLN 2022年5月号

こんにちは。

木々の緑がグッと鮮やかになってきました。

皆さまいかがお過ごしでしょうか。

ぼくはと言えば2月後半からずっと同じ織機で同じ素材で同じ織物です。
ダウンジャケットを着ながら作業していた織物をTシャツ一枚になってもまだやってます。笑
ちょっとずつしか織れないので量は大したことないんですけどね。
もう、ひたすら。

タテヨコ、リネンの織物にコットンのスラブ糸をちょっとだけ混ぜた「ひこうき雲」と呼んでいるものです。
父の代から手掛け始めた織物ですが、当時から織るたびごとに少しずつ工夫を重ねてきました。

しかし今回は初めて耳付きのまま帯にする、という大きなチャレンジがあったので「これは一筋縄ではいかない覚悟で」と覚悟していました。
結果、予想通りというか、予想以上というか、いや、それでもちゃんと織れるようになっただけでもラッキーだったかもしれません。

ぼくのインスタではその悪戦苦闘の一喜一憂をときどき伝えていました。
途中からだいぶいろんなコツを身に付けてきて、だいぶスムーズになりました。

悪戦苦闘のはじまり。
周りからみたらノイローゼになってるみたいだと思いますけど、本人は集中してるだけです。
この糸はかたいのでタテつなぎも一苦労。
ただ本数が少ないのでその点では楽。
織物の幅を変える「筬抜き」という作業。
2人でやると早いんですけど、今はみんなそれぞれ忙しいので一人でやってます。
いろいろあったけど、いい感じになりました。
これが織物の「耳」。
ここが端です、ときっちりした感じがぼくは好きです。潔くて。
シャトル織機で織られたものにしかありません。
なので高速織機にはこういう耳はつきません。

…で、それをいまだにずっと織ってます。

実際は何色かのタテ糸が最後まで織り切っていないため、それらは再度の登場のため待機している状態です。

それでも、数日前にようやく6色全ての半巾帯と八寸名古屋帯が揃ったので、それらを写真に撮って、
解説文を書いて、さきほどオルンのウェブショップに出品しました。
というタイミングでこの月刊オルンを書き始めました。

とりあえずほんの一瞬の一区切りです。

なので今月の作品紹介はその織物です。
お楽しみに。

こういう一区切りのタイミングになるまでは、もう余計なことは一切考えずにただただ織機に向き合ます。
それでも当然いろんな仕事、雑用が舞い込みます。
「♪毎度おなじみ~、ドタバタの日々~」です。

自分で企画して、自分で織って、自分の言葉で魅力を伝える、というやり方は効率が良くないというご指摘もあります。

それに周りの方からもよく「うわ、大変でしょ?」と心配もされます。

でもぼくたち本人はこういう仕事の仕方に振り切って、ようやく手ごたえを感じられるようになったし、
なんならちょっと恰好いいとも思っているし、
なにより変なストレスがなく、楽しんでやれています。

桐生という織物産地の中でいろんな経験をして、他の産地や他の業種の方々から話を聞いて、
ぼくたちなりに出した最適解だと思って今の仕事の仕方にたどり着きました。

産地といってもみんなが同じでは全然なくて、仕事の仕方、考え方はまさに十人十色です。

また、産地といってもそのイメージは人によってもさまざまなようです。

「デザインして自分で織る」をまさに実践中の人。
この後の検品、補修もしのさんの担当。

「産地について」

オルンに興味を持ってくれるお客さまは全国の産地、あるいは作り手自体にも関心を持っている方が多いと感じます。

ぼくも少しずつ、他の産地のことを学ばせてもらっています。

で実際に土地に行ってみると目から鱗なことがいくつもあります。

街そのもの雰囲気とか、中心市街地と企業との距離感とか。

工場中や外の雰囲気とか、産地内の人たち同士の距離感とか。

「ああ、こういう環境で仕事をされてるんだなあ」と。

事前に抱いていたイメージと現実とのギャップに驚くこともあります。
ポジティブ、ネガティブ、どちらもあります。

そりゃそうです。
旅(みたいなものです)ってそういうもんです。

また、製造現場側の人たちと経営者、営業側の人たちとでも随分意識が違ったりします。
ぼくの場合どっちも分かるのでどっちの肩も持ちたいのですが、立場が弱いのは大抵製造現場だったりするので、
そちら側少し歩み寄って話を聞くことが多い気もします。

立場によって感じていることって違います。

取材するメディアの方の場合、自分の知識と経営者の話を聞いて産地の現状を理解する方と、
現場の人の本音までたどり着ける人とではその理解の深さが全然違ってくるように感じます。

ぼくもオルンをやる前にずっと感じていた違和感が持っていました。

「みんな産地に行けばそこで簡単にモノが作れると思っているけど、
設備と技術者(職人)がいなければ何も生み出せないってことを理解してるのかなあ?」って。

「もう少し現場の状況を考慮しないとものづくりなんてできなくなるぞー」って。

「デザイナーや問屋さん小売屋さんはもう少し産地に気を使った方がいいですよ」って。

「気付かないフリをしても全て自分に返ってきますよ」って。

同時に経営者の中には技術者に対して敬意を払わない人も多数います。
そういう方々にも対しても思っていました。

「いやいや、あなたのその立場は現場の人たちがいるってことが前提なんですよ」って。

そういうことを織機の調整、修理を学んでいた頃いつも思っていました。
とくに華やかでイケイケな記事や話題に触れるたびに、表層的だなーって。

話はそれますけど、調整済みの織機で、織りやすい糸で、織りやすい織物を織るだけなら、初心者でも10分あれば織ることはできるんです。
これは本当に。
運転レバーをちょっと動かすだけですから。

でも糸を変えたり、織り方に工夫を加えたりするには、織機の微調整が必要になってきます。
それを何十年もやっていくうちに元の調整具合はどこへやら、部品もすり減ったり、代替の部品が付いたり、いろんなバランスが崩れてきます。
そうして個別の特徴をもったひとつの生き物のようになっていくわけです。
ウチで扱っているような織機はみんなそうです。

糸によって扱い方も大きく変わります。
そのノウハウは失敗を重ねながら確認してしかありません。
杼替えの構造も複雑な装置。
紋紙データの作り方を把握していないと理解できないので大変。
部品が無ければ無いなりに。
別の材料をつかうなど、柔軟な発想も機械の修理には必要。

で、その扱い方には説明書があるわけではないし、それぞれ個別の症状を発生するので
見よう見まねでは全く手に負えません。

だから技術者は単に織機を動かす役割の人、というだけではないんです。
すごく重要。

でも現場は仕事を取ってくることができないのでどうしても立場が弱くなりがちです。

どうしたもんかな?ってずー---と考えてました。

で結局、今となっては、産地に後継者がいないとか、産地でものがつくれないとか、
そういう厳しい状況になっているんだと思います。
(もちろん他にも原因は沢山ありますけど。)

ただ、同時に、ぼくたち産地側にも大きな落ち度があったんだと思います。
産地の企業の多くが従来通りのものづくりでこの先もやっていけるはず、という思い込みです。
でいいものを作ってさえいれば売り上げがあがるはず、と。

井清織物だってそのうちの一社で。

だからOLNを始めてからはクラフトフェア、展示会、SNS、色んなことに挑戦してきました。

ぼくたちは楽しそうだからと始めた訳では全然なくて、危機的な状況を何とかしなくちゃという感じです。

でもそのおかげで一般の消費者だけでなく、全国の着物屋さんやセレクトショップと取引ができるようになったので、ほんとありがたい話です。
これからの生産者は作りっぱなしではなく、誰かに依存することなく自力で自分たちの活動を説明するべきだと気付かされました。

2022年、気付けば全国にはそういう作り手が沢山います。
産地のカタチもどんどん変わって来てるようです。

みんな生き残るために必死です。

ライクアローリングストーンです。

転がってる石には苔は生えません。
(苔が生えることが悪いかどうかは別として)

この流れはこの先も続くはずです。

ちなみにぼくたちも今月は富岡おかって市場での「道楽市」、東京日本橋での「東京キモノショー」に参加します。
それとしのさんがお隣りの太田市のイベント「ota city market」に参加します。
(ぼくは町内会の廃品回収の日なのでそれを頑張ります。笑)

機会がありましたら、ぜひ遊びに来てください。
産地で作られたものを実際に見てみてください。
もし気に入ったら購入して日々の暮らしに役立ててください。

これからも仕事や日々の生活とのバランスを取りつつ、イベントに参加していきたいと思っています。

遠方の方でもお近くのお店にOLNの商品がもしかしたらあるかも知れません。
その時はどうぞよろしくお願いいたします。

いや、OLNじゃなくても手に取ったものが桐生の織物だったらこんなことを思い出してください。

群馬県にある桐生産地は、四方を囲む山とその中心の盆地でできてます。
そこには沢山のノコギリ屋根の織物工場があって、ぼくたちはそこで最高な織物を目指して日々格闘しています。

大きな機屋さんだけじゃなく、小さな機屋さんも数多くあって、そこには超最新の設備や旧式の織機があったりします。
そしてそれらを自在に扱う技術者たちが沢山います。

高齢化がちょっとだけ(笑)進んでいますが、まだまだ活気がある産地です。

みんな自分の仕事に誇りと意地を持っています。

ぜひその織物を手に取ってみてください。
そしてちょっとだけ産地に思いを馳せてみてください。

そんな経験ができる日本てなかな贅沢なんですよ。
実は。

八寸名古屋帯、半巾帯「ひこうき雲」

今回はこの作品の紹介文を載せようと思ったんですけど、すでに長めの文章になってしまっているのでウェブショップのリンクだけ貼っておきます。ご興味があったら読んでみてください。

「ふだん着物」が好きな方だったら絶対に喜んでもらえる織物だと自負してます。


5月の予定

5月8日 「動楽市」群馬・富岡市おかって市場

5月15日 「ota city market」群馬・太田市駅前

5月28、29日「東京キモノショー」東京・日本橋プラザマーム他

おわりに

今回も最後までお付き合いいただきましてありがとうございました。

久し振りに月の初めに発行できたので、なんだか達成感があります。笑

ちなみにこの投稿をアップしようとしている5月1日午前、なぜかすごく寒いです。

今日の朝、冬用の服を片付けたばかりですが、もう一回引っ張り出そうと思ってます。

体調管理、皆さんもくれぐれもご注意くださいね。

それでは皆様にとって素晴らしい5月になるように!

ではまた。

月刊OLN 2022年4月号

月刊OLN 2022年6月号

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