オルンの活動について

OLNについて説明を求められたとき私たちはいつも「OLNはブランド名であり、活動名でもある」と伝えるようにしています。
しかし「ブランド名」というのは意味がすぐに分かると思いますが、「活動名」とは何のことなのかピンと来ないかもしれません。
ですので今回はその「活動」とは何のことなのか?を書いてみようと思います。

まずその活動の目的は
「自立した織物業になること」です。

ではその「自立した織物業」とはどういうことなのかを実際に言葉で表そうとしたところ、自分の頭の中でもちょっと曖昧だったことが分かってしまい困りました。でも、なんとか下の5項目にまとめてみました。

・在庫を積んで発注の電話が鳴るのを待つような運任せの仕事の仕方ではなく、生産と販売を計画的に行う。

・糸商、各工程の職人、私たち織物業者、流通業者、小売業者、一緒に仕事をしてくれるすべての方々とお互いに敬意を持てる健全な関係を持つ。
 

・商品、作る人(産地)、売る人(卸先)、使う人(消費者)を守るために流通や価格を管理する。

・商品の価値を正しく伝えられる技術を持つ。

・将来も継続可能な仕事の仕方を身に付ける。

そんなイメージです。
ですので実際の活動としては
「そのための方法を考えること」と
「それを実際にやってみること」です。

5つの項目のどれもがすべて当たり前のことばかりですが、
OLNを始めた2014年の時点ではどの項目も取り掛かり始めた状態だったと思います。
あれから5年近くたった現在もまだまだではあるけれど、ずいぶんと前進できたのではと思います。

そして今回(頭の中を)まとめてみて分かったことですが、5つの項目の多くが「織物を作ること」以外の事でした。
また、これまで井清織物がやってこなかったことでもあります。

産地には数多くの同業者や関連業者がいますが、それぞれのポジションや役割というものがあります。
ルール化されている訳ではないのですが、「こうあるべき」という暗黙の了解がある気がします。

ですので、織物を作ることに専念するべき私たちが、作った後のことに手を出したり、口を出したりして変な感じに目立ってしまうのは良くないな、避けたいな、という思いもありました。

周りの目を気にしてしまう私自身の気の弱さから、
「これは井清織物としてではなく、OLNとしてですから」という言い訳を用意したのかもしれません。
あるいは、別人格のようなものを作っていつもの自分ではできないことを託したのかもしれません。
(私たち夫婦はどちらも典型的な裏方タイプで、仕事が注目されるのは嬉しいけれど、自分が目立つのは本当に恥ずかしくて、できることなら避けたいと思っています。)

もっともそうした小細工をしてでも自分の理想とする織物業者へ近づかなければ、この先、私たちが織物を生業として生きていくのは難しいという危機感の方が強かったと思います。

未だに実現途中の段階なのですが、それでも少しずつ形になっていたのはOLNをはじめたことで新たに出会った人たちの存在が大きいように思います。

いろんな人たちの顔が次々に浮かびますが、OLNをやらなければ参加することがなかった2つのグループの方々は外せません。

一つ目は、桐生の商工会議所が運営していた「room of kiryu(ルームオブ桐生)」という企画で出会った桐生在住のあらゆるジャンルの作家さんたちです。
パッと思い出すだけでも織物、編物、刺繍、など繊維の他、ガラス、陶器、木工、絵画などの作家さん、 アウトドア、猫ちぐら(猫のおうち)、帽子などのブランドを展開する方々、さらにはご自身が運営するギャラリーを自ら設計、建築をされた方など実に多くの出会いに恵まれました。

みなさんの仕事の仕方、考え方、クラフトフェアや販売会でのディスプレイのアイデア、それぞれの業種でできることとできないこと、などなどを教えてもらいました。

それまで織物の世界ばかり気にしていた私にとってはどれも新鮮でした。
また、その方たちの多くは組合に所属せず(そもそも組合がない!)、すべて自分自身で考え決定していたのです。

「仕事の仕方などで参考にしたり、相談する人が近くにいないと心細くないのかな?」と思うのですが、 異業種の皆さんは私に対して「しがらみが多くて大変じゃないですか?」とよく聞いてきました。

もう一つのグループは、もうすぐ3年目を終えようとしている
「NEXT CRAFTS GENERATION -Kanto Eleven Project」という存在が大きい気がします。
(長いので「kanto11」とします。)

いやいやその影響力は圧倒的に大きいと、小さい声で断言します。
そこには関東経済産業局管轄の11都県から1名ずつ選ばれた地場産業の担い手が集まっているのですが、
その中心にはセメントプロデュースデザインの金谷さんという講師が存在しています。
金谷さんから毎月講義を受け、宿題を出され、翌月発表というスタイルで続けてきました。

講義の内容は「小さな企業が生き残る」ために必須となるブランド力についてです。
かなりスパルタな宿題が続いたのは苦い思い出ですが、他の地域から選出された方々との差を痛感し、時には悔しさもありつつ、そこから得られるすべてがOLNとしての活動そのものだなあ、との実感もありました。

理想としては「kanto11 」のおかげでここまで成長できました!とか
このヒット商品が生まれました!とか言いたいのですが
特にそういう訳ではないので生徒としては優秀ではなかったようです。

しかし、どんな本よりも、どんな感動的な1回限りの講義よりも私にとっては大切な学びの時間となり、他の方々よりもゆっくりですが、少しずつ血となり肉となってきたと思えます。
その成果を堂々と言えるようになったら大きな声で言いたいです。
「あのときkanto11の勉強会に参加したおかげで
 理想に描いた織物業者になれました!」と。
はい、そうなるように頑張ります!

そういう訳でOLNの活動というものがなんとなく伝わったでしょうか?

しいてまとめるとすれば
・自分の業界とは別の人の考え方をいくつか知ると、自分の仕事を俯瞰的に見ることができる。
・周りの目を気にしてしまう心配性で、目立ちたくないという自分にもあったやり方があるのではと思っている。
・スパルタは苦手だけど、生きるために必要となれば喜んで。
こんなところでしょうか。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。
もし質問などある方がいましたら気軽にメールなどでご連絡ください。
あるいはアドバイスして頂ける方、宜しくお願い致します!

では。

音楽と織物

3月のおしらせ

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