月刊OLN2022年3月号

みなさんこんにちは。

いかがお過ごしでしょうか。

ぼくはと言えば、自分が痛風もちだと気付いてから突如ウィスキー派に転身です。

寒い日はまずはウィスキーのお湯割りで身体を温め、そのあとにハイボール。
ぼくはレモンを少し垂らして飲むのが気に入ってます。

邪道な飲み方だと思いますが、ウィスキーに対してまだこだわりはないので、自己流で楽しんでます。

「ビールの飲めない人生なんて…」と悲観していたのも過去の話で、今はそれなりに十分楽しんでいます。

今月の月刊OLNも
・OLNの活動とは
・OLNの商品紹介
・今月の活動予定
この3本立てで参ります。

「時間軸」

OLNは独自の時間軸で仕事をしている気がします。

他の機屋さんと比べると、ずいぶんとのんびり日数と時間をかけて仕事に取り組んでいるって思われる時があるのですが、別に狙ってそうしているというよりも、結果的にそうなっちゃっています。

もちろん季節に合わせてOLNの商品を準備したり、先方の納期に間に合わせる仕事をしつつ、ではありますけど。

どういうことかというと、毎回「これでついに解決。完成」と思っているのですが、次にやる時にはあらたな改善点に気付いたり、新たな問題が生まれたりして、改善を重ね続けていくうちに、気付いたらもう何年も経っていた、って言うことです。

普通の会社だったら「いつまで同じようなことやってるんだ」と怒られそうです。

でも新しい素材や織り方に挑戦する時って、いろんな時間が必要になるもので。

素材の長所や短所など、特徴を理解する時間。

製織作業で発生する課題を解決する時間。

クオリティーを上げるために、いろんな知恵を集めて複合的に考える時間。

とは言え、納期や季節は待ってくれないので、取り組む期間にも限りがあります。
ぼくたちは研究機関ではないからある程度のところで完成形にして納品して請求書を出して売り上げにする必要があるのです。

そして(時には慌ただしく)、次の素材や織りに突入していくすることに。

そうやって別の仕事に取り掛かると、実はそこで新たな発見があったりして、偶然いろんなヒントを手にすることがあります。

また、桐生以外の産地の方や織物以外の業種の人たちと出会ったりした時、そこでもいろんなヒントを頂きます。

そのたびに頭の中に蓄積されていきます。
「このアイデア、使えるかも…」って。

・・・

織物って不思議なもので、完成したばかりの数10㎝のサンプルを取引先に見てもらって「あら素敵!」なんて褒められて、仕事をもらえた嬉しさでスキップして工場に入ったりするのですが、いざ本番となった途端にさまざまな問題が、それこそ次から次へと湧き出てくることがあります。

その織り辛さに現場が悲鳴、なんてことも昔はよくありました。

なんなんでしょうね。
そういう織りにくい織物に限って「あら素敵!」って言われてしまうこの現象。

冷静に考えると、織るのが大変だから誰も作っていなくて目新しく感じる、っていうだけなのかも知れませんけど。

別に誰かに褒められなくても、試作を見て自分たちだけで盛り上がることだってよくあります。

とにかく「素敵!」って感じた素材感や存在感、肌触りやら質感。
実際に織るのが難しくても、その織物の魅力に気付いてしまうともう後戻りはできません。

ものづくりあるあるかもしれません。

昔の名作SF映画「未知との遭遇」みたいな感じです。

観たことない人のために説明しますと、
「未知なる大きな魅力に気付いてしまった人間は、気付く前の状態にはもう戻れない」そんなお話です。

単純に仕事の場合は、頂いた仕事を今さら投げ出せない、っていう状況でもありますけど。

出口が見えないなか、諦めずに格闘しつづける自分を客観的に見て、
「我ながらしつこい性格してるな」って感じます。

でも諦めが悪いおかげで、いろんな経験が積めたことも自覚してます。

おかげで技術の精度が上がったり、アイデアや選択肢は増えました。

こういうことに思いを巡らす時にいつも思うことがあります。
「ぼくたちのものづくりは、時間のとらえ方がファッションビジネス、アパレル業界、いや一般的な有名なキモノブランドとも全く違うよなあ」って。

それでも仕事としてきちんと成立するように、仕組みや考え方を整えてきました。

おかげで、いつの間にか、OLNが目指す織物と、ぼくたちの人生観や仕事観とが同じようなものになっていきました。

OLNは年齢、性別、洋装和装、そういう境界線を意識していません。
できれば自由に飛び越えていたいと願っています。

従来の織物業の在り方は気にせず、これからの「小さくとも自立した織物業」としてはどうあるべきか?という根源的なことだけにフォーカスしています。

そしてぼくたちは「普遍性」と「新鮮さ」という二つの価値の共存を目指しています。

新しいけど、懐かしさがあって。
一見シンプルだけど、よく見たら複雑。
購入して10年経っても、買ったときと変わらない高揚感。

もちろん、仕事に没頭するあまり人間関係や健康を損ねたりするようなことがないなやり方で。(健康は自分だけじゃなく取引先も)

そういうものを目指しています。

ゆっくりとだけど、毎年少しずつだけど、そっちの方向へと成長できている実感はあります。

今ぼくたちが身を置いている環境では、今のゆっくりペースでしか前に進めないのだけど、むしろこのペースだからできることに集中しています。

近頃はそんなぼくたちのペースを理解したうえでお付き合いしてくれるお取引先も少しずつ増えてきました。本当にありがたい話です。

結構な長い年月がかかってしまいましたが、ようやく自分たちにちょうどいい仕事のペースが見つかった気がします。

今取り組んでいる真っ最中の麻の織物。
父の時代を含めると20年以上かけていまだに進化中です。
たとえばこの1mにも満たない試織サンプル。
タテつなぎから数えると24時間以上かけて織れたのがこの長さ。
いったい途中で何が起きているのか。笑

 作品紹介:八寸なごや帯「松菱」

さっきとの話とは打って変わって、紆余曲折はありつつも試作から完成まで比較的スムーズにいけた織物もあります。とは言っても構想から試作までが難航しちゃって丸一年以上かかったり、その間、他の糸を使ったり別の織り方を試したけど失敗したりして、ようやくたどり着いたという織物ではありますが…。

— 「松菱(まつびし)」 —

OLNの作品としては珍しくフォーマル感のある帯ができました。

頭の中にイメージだけはずっとありました。
「こんな感じの帯があったらいいのに…」

ぼくらは目標や挑戦をいくつも抱えながら、目の前にある日々の仕事に取り組んでいます。

そうした中で新しい素材や織り方、さまざまなテクスチャー、価値観、感覚に出会ったり気付いたりしながら私たち自身をアップデートしている気がします。

そしてごく自然に、過去に抱いた目標を具現化するための素材や織り方、感性を駆使してこの織物に近づいていきました。

最終的には古典模様である「松菱」というモチーフが加わることで
ようやくOLNらしいシック&フォーマルな帯が完成しました。

フォーマル感といっても豪華絢爛でゴージャスなお着物には合いません。

あくまでもシンプルな装いのために、のイメージです。

私たちが目指している世界観へ近づける帯がまたひとつ増えたのではないかと思います。

OLNは八寸帯にこだわりを持っています。
そのこだわりは井清織物の歴史そのものでもあります。

製品寸法:幅約31㎝(8寸2分)
     長さ約5m(1丈3尺2寸)

品質:絹100%

税込価格:77,000円(70,000円+税)

詳しくはこちらからもご覧いただけます。
https://inokiyo.saleshop.jp/

これだけ説明していて申し訳ないのですが、pearl grayは今在庫がないのでちょっとお待ちいただいています。

ご理解のほど!

3月の予定

それでは最後に今月のイベント等のご報告です。

3月4日~13日
菱屋カレンブロッソ日本橋オープン記念企画「藤井絞&OLN展」@コレド室町テラス1F

オープン最初の3日間、4~6日は藤井絞の藤井社長とぼくが在廊してきました。
想像してた以上に多くの皆さんの来店で、楽しい時間となりました。

着物業界の人たちから見ても、藤井絞という有名大手メーカーと、桐生の家族経営のブランドが一緒に?という異色の組み合わせだと思います。

会期は13日まで。

・・・

3月8~9日
東京カジュアル着物展@東京プラザマーム2F

今回は11回目とのこと。新しいメーカーさんも多く参加していました。

いろんな意味で大変楽しかったです。笑

花想容・中野さんの講演会、途中から聞くことができたんですけど、すごくおもしろかったです。

具体的な報告になって申し訳ないのですが、それは実際に聞いた方だけの特権ということで。

・・・

3月18~19日
サンチカンマッチ@富士吉田

繊維産地として共通点も多い富士吉田産地と桐生産地。
1年を通じて交流を重ねてきましたが、これが最後のイベントなります。

工場見学やトークイベント、販売会などを予定してくれています。

個人的には昨年知り合った舟久保さんのいる織物工場が楽しみです。

おわりに

最後に少しだけ近況を。

いろいろあって4年生から始めた長男のスイミング。
(ぼくも通った野間スイミングスクール)

見事に6年生の終わりまで続けることができました。

水泳選手を全く目指さない生徒なのに6年生まで続けたことが異色の存在みたいでしたが、ゲーム好きのコーチと友達になったりして彼なりに充実した経験になったのではと思います。

スイミング終わりに親子で通う戸田書店での時間がなくなるのは寂しいですけど、とにかくお疲れさまでした。

毎回、帰る途中に寄りたいなあと思っていた居酒屋「どんさん亭」。
最後に念願かなって家族みんなで打ち上げをしました。

そんなこんなで今回の月刊OLNも最後までお付き合い頂きましてありがとうございました。

それではお別れです。
みなさんにとって素敵な3月になりますように!

また来月~。

月刊OLN 2022年2月号

月刊OLN 2022年4月号

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