私たちが仕事をする上で大切にしていることがあります。
一つ目。糸屋さんや各工程の職人さんなど産地で一緒に仕事をして頂いている方々、デザインしたり織ったりしている私たち、 商品を仕入れて販売してくれる小売店のや流通の方々、気に入って購入してくれるユーザーの方々、 みんなが対等の関係である。 このことを理解している人とだけお付き合いする。
当たり前の話で、ごくごく普通の感覚だと思っています。でも自分にとっての普通と他の人にとっての普通とが違っているのも当たり前の話でもあり…。
この仕事を始めて数年したときに感じた、「立場の弱い誰かにしわ寄せが行く仕事の仕組みなんて続かない」という思いは今も変わりません。そして仕事が上手くいったときには、関わった人たち皆で喜びを感じることができる、そういう関係でありたいと思っています。
二つ目。仕事は大切ですが、家族や健康を犠牲にしない。 日々の暮らしよりも大切なものは何もないと思っています。 100%の実践はむずかしいですが、とても大事なことです。
これも仕事を長く続けるためには大切なことだと思っています。個人的な経験ですが、一時期ムリを続けて体を壊したことがありました。周りにも心配をかけ、仕事上迷惑もかけてしまいました。なによりも家族に、とくに妻には本当に大きな負担をかけてしまいました。
時間の使い方や、物事の優先順位の付け方などで改善できるところはあります。アントニオ猪木ではないですが「元気があれば何でもできる!」です。もし元気がなくても健康であれば、あるいは生きていれば、そんな思いでいます。
その思いは一緒に仕事をしていただける相手にも同様です。お互いの健康、家族にムリを押し付けないように、いい仕事ができたら嬉しいです。
なにせ続けることが一番重要なのですから!
最後に三つ目。良い織物を生み出すために「できる限り自分の純度を高める」ということです。もう十分に大人ですけど、それほど大人にならなくてもいいと思います。 大切な何かに気付けるようにしておきたいのです。
井清織物の工場の入り口には「textile comes first」という言葉が掲げてあります。どうすべきは織物が教えてくれる、そんな意味です。
織物が生まれてくるまでには材料、デザイン、原価などさまざまな選択に迫られます。その時に雑音となるのは自分の虚栄心や、周囲の顔色、あるいは作業を簡略化して楽をしようという怠け心などです。そういう時に「今から生まれてくるこの織物にとってベストな選択肢はなにか?」と自分の心に問いかけています。私の心や思考、それまでの行動に嘘がなければ、あるいは高い純度が保たれていれば、その答えは織物が教えてくれるのです。※そう言いながらも、最近の自分はどうだろう?と少し自信がない時もありますが。
ちなみにこの言葉は亀田誠司さんがラジオ番組でお話しされていたエピソードから拝借しています。(かつてマイケル・ジャクソンがレコーディング中(「オフザウォール」か「スリラー」かは忘れました)に曲作りで迷った時、プロデューサーのクインシー・ジョーンズが送ったアドバイスが「Music comes first!」だったらしいです。)
OLN、そして井清織物はこういう考えで織物業と向き合っています。