麻ふきんのこと

— なぜ麻ふきんを桐生で織っているのか? —

一般的に麻の織物は空気があまり乾燥しない地域が得意とするもので、
今頃の11月中旬くらいから4月くらいまでずっと(特に冬のからっ風!)乾燥している桐生という土地は、本来麻の織物には向いていないと思っています。
ある程度の湿度がないとタテ糸(麻)が扱いにくいのです。

近江縮(おうみちぢみ)が有名な滋賀県には琵琶湖があります。
小千谷縮(おぢやちぢみ)の新潟県は豪雪地帯らしいので、きっと春先まで山には水が蓄えられていて、一年中、川の水が豊かに湧き出ている感じなのでしょう。

ちなみに麻のふきんでも有名な中川政七商店さんの奈良県も麻織物が盛んですが、それはおそらく歴史的な理由が大きいのではと思います。
なんせ麻は日本でもっとも歴史がある糸ですからね。
太古からの歴史といいますか。
その程度の知識しかないので、これ以上はやめておきますね。

ではなぜ私たちが麻ふきんを織っているのかというと、偶然から生まれているんです。

もともとは京都の問屋さんの別注で麻の夏帯を織っていたのですが、この織物を手掛け始めた頃は麻素材をジャカード織機で織ることに関してまだノウハウも少なく、とにかく織りキズが多発していました。
その帯は名古屋帯だったので約5mくらいあります。
その中で一つでも目立つ織りキズがあればもちろん出荷できません。
行き場のない反物がずいぶんと積んであった時期がありました。

原価がかかっている、という意味でももちろんもったいないのですが、お金と同じくらい、自分たちの作業に対してももったいなく感じてました。
一所懸命にみんなで知恵を出して、工夫して、細心の注意を払って、そうやって出来上がったものですから。
ひとつの織りキズを除けば他は何の問題もない綺麗な織物なのに。
(この織物は織機から下ろさないとキズが分からないという、なんともやっかいな特徴があるのです)

しのさん織機の前

当然「なんとか他の使い道で商品にならないものかな?」となり、いろんな使い方を実際に試してみました。
ストールのように首に巻いたり、雑貨の材料としてみたり。
その中でテーブルを拭く、いわゆる「台ふきん」が非常に使い勝手が良かったのです。
素材の事を調べたら、麻はもともと強い繊維なのですが濡らすとさらに強度が増すという嬉しい発見もありました!
日常使いにもってこいです。

その頃がまだ子供が小さかったので(まだ小さいですが)我が家の食事はかなりドタバタで、テーブルの縁には時間が経って硬くなったもの(お米とかいろいろ)もあったと思います。
そういうものもしっかり拭き取ってくれるし、口の周りを拭く時も重宝しました。
乾燥が早く、生乾きの嫌な臭いも出にくいこともその時すでに実感してました。

ただし、麻の生地を広い巾で大量生産用に製織しているわけではないので、
どうしても一般的な商品と比べると価格が高くなってしまいます。
帯の再利用とはいえ、原価はかかっています。
とはいえ、みんなに受け入れてもらえない価格にしても意味がない…。
最終的には「1200円+消費税」というところに落ち着きました。

おかげさまで2014年秋に始まったオルンの活動からずっと続いている定番商品となりました。
その間にいくつかのマイナーチェンジもありました。

例えば染色方法も工夫を重ねてきました。

当初、桐生ではあまり一般的でない麻素材の帯だったので、染屋さんとも試行錯誤を繰り返してました。
しかも、二次利用して雑貨を作る、麻ふきんにもなる、となると帯の時よりも考慮する要素が増えてきます。
帯の時には想定しなかった、洗濯機で何度も洗ったりする、ということなど。

ちなみに現在、井清織物で扱う麻などの天然素材は桐生の小池染色さんという糸染め屋さんにお願いしています。
伝統工芸士でもある親父さん(現会長)も超一流の仕事人なのですが、同じく伝統工芸士の社長・均さん(ぼくと同じく異業種からの転職組!)も非常に真面目で勉強熱心な方。
均さんは奥様(好奇心旺盛でいつも明るい笑顔!)と一緒にオルン展にも足を運んでいただいているので、ぼくたちが何をやっているのかを理解していただいていて、相談しても理解が早いので助かっています。

ちなみに小池さんの技術的なサポートのおかげもあり、今では織りキズもほとんどなくなり、帯では売れないから再利用、というのはほとんどなくなりました。
むしろ、別注などで余分に残った糸を最後まで使い切る役割としても麻ふきんは活躍しています。

こうして麻ふきんのことを振り返ってみると、ぼくがオルンでやりたかったことのひとつを象徴していることに気付きました。

それは「素材、あるいは織物を無駄にしない」ということ。
どうしても糸は中途半端に残ります。
しかし、うちのように小さな会社ではそういうロスが収支に大きく影響します。

そして織りキズも避けては通れない道です。
でも、帯としては失格だけど、良いテキスタイルとして成立していれば他に活用法があるはず。

野菜やお肉などの食材のように最後まで使い切れる仕事の仕組みを構築したい。
ずっと思っていることです。今でも。

話を戻して…。

他にも小さな変化って、思い返すといろいろと出てきます。
OLNのネームもサイズを小さくして目立たなくしたり、
フリンジのところの縫製の仕方もちょと可愛く変えました。
始めは洗った後にアイロンがけをしてからビニールに入れていましたが、初めてオルンの麻ふきんを手に取る方にも実際の風合いを理解してもらうために、あえてアイロンはあてず、ビニールから出した状態でお店に並べるようにも変えました。


そんな麻ふきんをweb shopでも扱うことにしました。
以前からお客様からの要望はあったので、できる範囲からやっていこうと思ってスタートしました。

でも、織りの柄は選べなかったり、実物とは色が微妙に違ったり、
送料がかかったり(そりゃそうなのですが)といろいろご不便をおかけしますが、宜しくお願いいたします!

仕入れたいという小売店の方、ご連絡お待ちしてます!(笑)

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